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働き方改革とは?働き方改革関連法が変える11の内容を解説
2021.03.22

失敗する働き方改革と、成功する働き方改革

働き方改革とは?働き方改革関連法が変える11の内容を解説

著者 Bizコンパス編集部

 「残業時間の規制」「有給取得の義務化」など、働き方改革には、さまざまな取り組みがあります。

 今回は、「働き方改革」の基本をおさらいするとともに、具体的にどういった内容が働き方改革関連法によって改正されたのかを説明します。

働き方改革とは?

 働き方改革は、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、働く人材一人ひとりが、より意欲を持って生産性を上げられる社会を目指す取り組みです。それを実現するために、国からは、さまざまな関連法案が施行されています。

 多くの企業で行われている働き方改革としては、「長時間労働の是正」「テレワークなどの多様な働き方の導入」「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」などが挙げられます。

 日本が直面している「少子高齢化に伴う生産年齢の減少」や「働く人材の多様なニーズ」などの課題を解決し、働き方改革を促進するためには、生産性向上・就業の拡大・本人の意欲や能力を発揮できる環境づくりが重要となります。

働き方改革はなぜ必要?その目的とは

 国が働き方改革を推進する背景には、3つの動機があります。

■ 少子高齢化による労働力不足を補うため

 1つめは、少子高齢化への対策です。1990年後半を境に、労働の現役世代である生産年齢(15~64歳)人口の割合は減少し続けています。労働力が減少すると企業の生産性が低下し、GDP(国内総生産)や税収も落ち込んでしまうため、未就業の女性や高齢者の労働参加率を向上させる必要性に迫られています。

※参考:厚生労働省『日本の将来推計人口(平成29年推計)の概要』

■ 働く人材のニーズの多様化に対応するため

 2つ目は、共働き世帯の増加です。共働き世帯数は1990年代半ばに専業主婦世帯の数と逆転しており、2017年では専業主婦世帯のほぼ倍に達しています。

 これからの社会では、夫婦共働き世帯や単身世帯において、家事や育児・介護を担いながら労働に従事する人材の増加が見込まれます。労働者は、家族や労働者自身のケアに時間を割きながら、生産活動に参加していくことが求められます。そのため、時間の制約から解放されることや、フルタイム以外の労働への処遇が改善されることが必要となっています。

※参考:労働政策研究・研修機構『専業主婦世帯と共働き世帯』

■ 長時間労働と過労死問題を解決するため

 日本における長時間就労は、世界的に高い水準です。労働政策研究・研修機構の『データブック国際労働比較2018』によれば、「一人当たり平均年間総実労働時間長」において、日本は1,713時間となっており、アメリカ1,783時間, イタリア1,730時間に次ぐ数字です(イギリス1,676時間, スウェーデン1,621時間, フランス1,472時間, ドイツ1,363時間)。

 長時間労働による過労死は、近年、減少傾向にはあるものの、その数は依然として少ないとは言えません。働き方改革を通じて、企業における長時間労働の是正、働く人材が健康に活躍できる就労環境の整備が目指されているのです。

※参考:労働政策研究・研修機構『データブック国際労働比較2018』

働き方改革に対する政府の動き

 働き方改革の推進において、2018年1月には厚生労働省の「モデル就業規則」から副業禁止規定が削除され、2018年6月には参院本会議で「働き方改革関連法案」が可決・成立するなど、政府がスピーディーに動いていることがわかります。

 2019年4月1日からは「働き方改革関連法案」の一部が施行され、「罰則付きの時間外労働の上限規制」が始まりました。残業時間上限の法律規制は、1947年に制定された労働基準法の初の変更で、この「働き方改革」は70年ぶりの大改革と言われています。

 他にも、「年次有給休暇の確実な取得」や「勤務時間インターバルの普及促進」などが含まれた長時間労働の抑制が目指されるとともに、労働規制を緩和する仕組みである「高度プロフェッショナル制度」も導入されています。

※参考:厚生労働省『働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律概要』

労働時間法制の見直しについて

 働き方改革で特に注力されているのは、「労働時間法制の見直し」です。「働きすぎ」を防ぎながら、「ワークライフバランス」と「多様で柔軟な働き方」を実現することに力が注がれています。

① 残業時間の上限規制を導入

 残業時間の上限規制が導入されたことによって、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的で特別な事情がない限りは、これを超えることはできません。

 臨時的で特別な事情であったとしても、「年720時間以内」「複数付き平均80時間以内(休日労働を含む)」「月100時間未満(休日労働を含む)」といった3つの上限を超えることは規制されています。また、原則である月45時間を超えることができるのは、年間に6カ月までとなっています。

② 「勤務間インターバル」制度の導入を促す

 「勤務間インターバル」制度とは、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保する仕組みです。厚生労働省の基準では、休息時間の目安として9時間以上11時間未満が推奨されています。

 この仕組みを企業の努力義務とすることで、働く人材の十分な生活時間や睡眠時間を確保することを目指しています。

③ 年5日の年次有給休暇の取得を義務づける

 働き方改革では、年に最低でも5日の年次有給休暇を労働者に取得させることを、企業に義務づけました。

 これまでは、労働者から申し出がなければ、年次有給休暇を1日も取得しなくてもいい仕組みでしたし、そもそも、日本の企業文化から、有給の申請がしにくい、という状況もあったのです。

 こうした状況を打開すべく、年5日の年次有給休暇の取得が義務づけられました。

④ 月60時間を超える残業は割増賃金率を引き上げる

 働き方改革前、月60時間を超える残業割増賃金率は大企業が50%、中小企業が25%でしたが、働き方改革関連法改正後は、大企業は変わらず50%、中小企業は25%から50%に引き上げられました。

⑤ 労働時間の状況を客観的に把握するよう企業に義務づける

 これまでは、割増賃金を適正に支払うため、労働時間を客観的に把握することを通達で規定していました。しかし、裁量労働制の適用者は、みなし時間に基づき割増賃金の算定をするため、通達の対象外となっていたのです。

 また、時間外・休日労働の割増賃金の支払い義務がかからないため、管理監督者も通達の対象ではありませんでした。

 働き方改革が成された現在は、健康管理の観点から、裁量労働制が適用される人材や管理監督者も含め、すべての労働者の労働時間の状況がタイムレコード導入などの客観的な方法で把握されるよう法律で義務づけられたのです。

⑥ 「フレックスタイム制」の清算期間を延長する

 これまでは、「フレックスタイム制」の労働時間の清算期間は1カ月でしたが、働き方改革により、その期間が3カ月になりました。

 そもそも、フレックスタイム制の目的は「一定期間(清算期間)の総労働時間を定め、労働者がその範囲内で各日の始業時間や就業時間を自由に選択して働くことで、労働者のワークライフバランスを確保する」というものです。

 これまでの清算期間(1カ月)では、「月の前半にたくさん働いて、月の後半をセーブする」といった調整を行う際は、その月内に行わなければいけませんでしたが、清算期間が3ヶ月になったことで、慌ててその月に総労働時間の調整を行わずに済むようになったのです。

 子育てや介護といった生活上のニーズに合わせて、ある程度長期スパンで労働時間が決められ、より柔軟な働き方が可能になりました。

⑦ 「高度プロフェッショナル制度」を新設する

 「高度プロフェッショナル制度」とは、高度な専門知識を有し、職務の範囲が明確で一定の年収要件(年収1,075万円以上)を満たす労働者を対象に、労働基準法に縛られない自由な働き方を認める制度です。

 自由な働き方を認めるとはいえ、事業主にはその労働者が健康的に働くことができるよう、管理監督義務があります。年間104日以上かつ4週で4日以上の休日確保措置や、健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置が義務づけられています。

⑧ 「産業医・産業保健機能」の強化

 これまでは「労働者の健康を確保するために必要があると認められたときに事業者に勧告することができる」といった形式でしたが、働き改革によって、現在では事業者から産業医への情報提供を充実・強化させ、事業者は労働者の労働状況などを産業医に提供しなければならなくなりました。

 また、労働者の健康情報の適正な取り扱いルールを推進し、労働者が安心して健康相談や健康診断を受けられるようにしなければなりません。

雇用形態に関わらない公正な待遇の確保について

 「労働時間法制の見直し」の他にも、「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」についても、働き方改革では特に重要視されています。

① 不合理な待遇差の禁止

 同一企業内において、正社員と非正規社員の間で、基本給や賞与などあらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることが禁止されました。

 具体的には、職務内容、職務内容および配置の変更で、その他の事情などの違いに応じて待遇を決定する必要があります。職務内容、職務内容および配置の変更の範囲が同じ場合は、同じ待遇としなくてはなりません。 

② 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

 非正規社員は、正社員との待遇差の内容や理由などについて、事業主に対して説明を求めることができるようになりました。

 それと同時に事業主には、雇い入れ時に有期雇用労働者に対して、雇用管理上の措置の内容(賃金、教育訓練、福利厚生施設の利用、正社員転換の措置など)に関する説明を義務づけました。

③ 行政による事業主への助言・指導や裁判外紛争解決手続きの整備

 行政による助言・指導や行政ADRの規定を整備するのも、働き方改革の役割です。都道府県労働局において、無料・非公開の紛争解決手続きを行います。

 具体的には、有期雇用労働者・派遣労働者について、行政による裁判外紛争解決手続きの根拠規定を整備したり、「均衡待遇」や「待遇差の内容・理由に関する説明」についても、行政ADRの対象となります。

働き方改革の課題

 長時間労働などを規制する働き方改革ですが、課題は山積みです。たとえば、会社では規定時間内にタイムカードを切ったとしても、仕事を持ち帰って自宅で残業してしまう労働者がいることなどが挙げられます。

 残業を抑制する声がけは簡単ですが、労働者のタスクが規定時間内におさまる量かを把握しておくのも、事業主の責務です。労働時間の抑制とともに、仕事量を適正化することで、仕事の持ち帰りや無断で残業することの防止になるでしょう。

 労働者の働く環境を改善するためには、要因の根本から解決することが課題です。

働き方改革の成功事例

 徐々に各企業に浸透しつつある働き方改革。そんな働き方改革で、生産性を加速させ始めている企業がすでに存在しています。

■ 第一生命保険株式会社

 第一生命保険株式会社では、従来から使っていた固定電話によって、オフィスに縛られた働き方になってしまい、働き方改革を促進することができませんでした。しかし、従来の内線環境をクラウド化し、Web電話帳サービスを導入することで、どこでも働ける勤務環境が構築でき、さらに働き方改革を進めることができたといいます。

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■ トランスコスモス株式会社

 トランスコスモス株式会社は、緊急事態宣言後は全従業がリモートワークに移行しました。しかし、多くの従業員がリモートワークに移行したことで、「雑談」のコミュニケーションがなくなり、いくつかの問題を抱えるようになったといいます。そこで同社では、リモートワークにおける雑談を活性化するために、あるコミュニケーションツールを導入しました。

詳しくはこちら

■ NTTコミュニケーションズ株式会社

 NTTコミュニケーションズ株式会社では、2002年ごろから在宅勤務制度を導入。年休に加えて資格取得を目的とした休暇制度や、1日の中で勤務時間を分けて働くことができる分断勤務など、働きやすい環境を整える取り組みをしてきました。2017年には在宅勤務制度の事由制限を撤廃。在宅勤務に理由は不要とし、社員の働きやすい環境づくりを促進しました。

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働き方改革は企業の成長に必須

 働き方改革は、労働者に自由で健康的な働き方を推進する関連法案です。今は若い社員しかいない企業でも、いずれは出産や育児といったライフステージを迎える社員が現れるかもしれません。

 そんな時に、柔軟な働き方を提案できない企業であれば、有能な人材を手放さなければいけなくなってしまう可能性もあります。従業員の多様なニーズに応えられなければ、成長し続けることは難しいことかもしれません。

 働き方改革の必要性を理解し、上手く導入していくことで、企業の成長が促進されるのです。

※掲載している情報は、記事執筆時点のものです。

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