数あるITに関連するキーワードの中でも、ここ最近、特に製造業を中心として耳にするようになったものの1つに「デジタルツイン」がある。コンシューマー向けである「5G」などのように幅広く知られるワードではないが、産業界にとっては非常に注目されているワードとなっているようだ。
そもそもデジタルツインとは、「デジタル」の「ツイン」、つまり現実世界にあるものを、デジタルで再現する技術のことを指す。単にモノの形状を再現するだけでなく、例えば、工場内の設備や生産しているものなどをすべてデジタルデータとして取り込める。つまり、コンピューター空間上にもう1つの工場を作り上げ、その動作を再現するのがデジタルツインというわけだ。
実際の工場と同じ施設をデジタル化できれば、それを活用したさまざまなシミュレーションをデジタル空間上で実現できるようになる。そうすることにより、工場にある機器にどのような変化が起きるかを見通すことができ、ひいては、機器の故障なども事前に予測できるようになる。
従来、そうしたことを実現するには、同じ設備をもう1つ用意する必要があり非常に手間がかかるものだった。しかし、デジタル空間上であればそうした手間もかからず非常に効率が良い。
製造業においてデジタルツインが生かされるのは生産の分野だけではない。製品開発とサポートという側面においても、デジタルツインは有効活用できる技術となり得るものだと考えられている。
例えば、実際に開発した製品からデータを取得し、その製品がどのような使われ方がなされているかを確認し、点検の強化や製品設計時の改善へとつなげられるだろう。そしてこうしたサイクルを短い期間で回すことによって、製品の迅速な改善を進められるようになるわけだ。
だがそもそも、現実空間にあるものをそのままコンピューター空間で再現するというのは容易なことではない。それが実現できるようになったのには、「IoT」(Internet of Things)と「CAE」(Computer Aided Engineering)の存在が大きく影響している。
「IoT」と「CAE」がデジタルツインの実現に貢献… 続きを読む