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「AI+IoT」の電子部品が人気の背景に、あの社長とあの大統領あり?
2019.10.01

AIとIoTの現場から第1回

「AI+IoT」の電子部品が人気の背景に、あの社長とあの大統領あり?

著者 すずきひろのぶ (鈴木裕信)

 AIとIoTという文字を目にしない日はないほど、この二つのバズワードは世の中に氾濫している。

 だが、AIをIoTのフィールドで使うとなると、IoTの端末側で処理できずに、IoT端末からクラウドにデータを送り、画像処理や音声処理を行い、その結果を再度IoTノードに送って処理している。Amazon EchoやGoogle Homeはそのタイプだ。これを端末側でAI処理を行うとなると、とたんに高価なCPUや高性能GPUに頼ることになる。まだまだ高嶺の花である。

 そんな中、北京のチップ・ベンチャー企業Canaan Creative社が、RISC-V(リスクファイブ、詳細は後述)ベースのプロセッサーに、AIエンジンを組み入れた安価なSoC※「K210」を発売。深センのハードウェア・ベンチャー企業SiPEED社が、それをIoT向けの小型組込みボード「SiPEED MAiXシリーズ」に搭載して発売した。初期ロットはあっという間に売り切れ。国内外の技術系YouTubeチャネルやブログサイトで大モテの状態だ。

※SoC…System-on-a-Chipの略。1つのシリコンチップの上に、プロセッサーだけではなく、複数の機能を集約させたチップ。

 最小キット「SiPEED MAiX Bit」のボードサイズは全長約5cmで、カメラと液晶もついて、値段は日本国内では店頭価格で約3,000円、海外からの通販であれば約20ドル強(約2,200円、輸送費含まず)で購入可能だ。画像認識に必要なAI機能をハードウェアとしてチップの中に組み込んでいるので、顔検出プログラムを簡単に作ることができ、動作も驚くほど高速だ。カードサイズの「SiPEED MAiXduino」は、無線LAN機能、カメラ、内蔵マイクなどが組み込まれていて、秋葉原の店頭価格で約3,900円と激安。

 評価のために、SiPEED MAiX BitとSiPEED MAiXduinoを購入し、顔検出などのプログラムをプログラミング言語「Python」で書いてみたが、難なく動作し、パフォーマンスも驚くほど良いことに筆者は驚いた。プログラム開発のための環境もオープンソースのアプリケーションで用意でき、何十万もするような特別な開発環境を購入せずとも、すぐに開発にとりかかれた。

 このように高性能で安価なK210というSoCは、なぜ生まれたのか。その背景を分析する。

 

RISC-Vはオープンソースが最大限に利用できる

 K210について説明するためには、まずはそのベースとなるRISC-Vというものを理解する必要がある。RISC-Vとは、米カリフォルニア大学バークレー校(以下 UCB)で研究されていたオープンソースの命令セット・アーキテクチャー(ISA: Instruction Set Architecture)である。

 UCBは1980年代からRISCアーキテクチャーの研究を続けており、これまでもBerkeley RISCと呼ばれるRISC-IやRISC-IIといった一連のRISCアーキテクチャーを発表してきた。その5番目に当たるのがRISC-Vである。

 初期のRISC-I及びIIは、後に作られるサン・マイクロシステムズ社が開発・販売したRISCプロセッサー「SPARC」に多大な影響を与えている。そしてSPARCファミリであるSPARC64 VIIIfxは日本のスーパーコンピュータ「京」のプロセッサーとして採用されているので、今回の手に入れたSiPEED MAiXシリーズも「京」の遠い親戚筋にあたるといえるのかもしれない。

 2015年にRISC-V財団が立ち上がり、現在はこの財団が中心となり開発・普及を推進している。会員数は現時点で325メンバーである。プラチナ会員にはGoogle、NVIDIA、Digital Western、Samsung、Qualcommなどに混じってAlibaba、Orion、Huamiといった中国勢も数多く加わっている。

 新しい命令セット・アーキテクチャーを成功させるには、半導体の設計・生産だけではなく、それを支える開発ソフトウェア群などが必要だ。RISC-Vは、オープンソース・ソフトウェアを最大限に利用してカバーしている点も特徴的である。筆者も今回試してみた範囲では、特別なソフトウェアを購入することなく、100%オープンソース・ソフトウェアのみで開発することができた。まさに今どきのアプローチである。

 といっても、既存のマーケットにはIntelもあるし、ARMもある。RISC-Vの命令セット・アーキテクチャーがどんなに良くとも、既存のマーケットの中で頭角を現すのには時間がかかるだろう、あるいは生き残るとしてもニッチなマーケットで細々と生き残るだけかもしれない……と筆者もついこの間までは考えていた。

 

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すずきひろのぶ (鈴木裕信)

すずきひろのぶ (鈴木裕信)

80年代よりUNIXやネットワークのエキスパートとして活躍し90年代よりコンピュータセキュリティに携わる。現在は業務アプリケーションにSELinuxを適用し安全性を高める研究に従事。近著「マジメだけどおもしろいセキュリティ講義 事故が起きる理由と現実的な対策を考える (Software Design plusシリーズ)」絶賛発売中

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