ビットコインなど仮想通貨の基幹技術である「ブロックチェーン」を、金融以外のビジネス領域で活用する動きが活発化している。「記録を改ざんできない」「管理者がいない非中央集権的な仕組み」という特性を生かし、ウォルマートのように商品のトレーサビリティー(追跡可能性)管理に使う企業も現れている。
ブロックチェーンスタートアップのシビラ(大阪)と電通国際情報サービス(ISID、東京)も8月、「質の高い学びをブロックチェーンに記録し、教育のトレーサビリティーを保証する」実証実験を実施。変革真っただ中の教育分野への活用の可能性を検証した。
仮想通貨の技術であるブロックチェーンは、教育分野でどのように活用され、どのような価値を生み出すのだろうか?実証実験を取材した。
子供が課題をクリアすると、“仮想通貨”が支払われる
2019年8月、国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)について体験しながら学ぶサマースクール「落合陽一と考える『ぼくらのミライ』せとうちサマースクール ~感じて学ぶSDGs~」が岡山県倉敷市で開かれた。
小中学生の参加者たちは、講師役の落合陽一・筑波大学准教授と共に、無人島で拾い集めた廃材を使ってアート作品を制作することで、環境問題を考え、循環型社会をどうつくっていくかを議論した。
子どもたちから少し離れたスペースでは、シビラのエンジニアたちがパソコンのモニターを見つめていた。子どもたちのSDGsの学びは、ブロックチェーン上に記録されていたのだ。
サマースクールの冒頭、子どもたちには専用アプリが入ったスマートフォンが配られた。個人とひもづいているカード型のウォレット(仮想通貨を保管する財布に相当)をかざしてアプリを開くと、スタンプラリーのようなマップが現れる。マップの各マスには「SDGsクイズ」や「学んだことのプレゼン発表」さまざまなクエスト(課題)が用意され、クエストをクリアすると次のマスに進むことができる。
このアプリはブロックチェーン技術を使って作られ、クリアの報酬としてトークン(仮想通貨)が受け取れるクエストも用意されていた。
シビラとISIDは今回の実証実験で、SDGsへの貢献や学びに対する報酬として、子どもたちにSDGsトークンを付与した。
トークンはそれ自体では価値を持たない。しかし、シビラの藤井隆嗣社長は、「ビットコインを見ても分かるように、トークンが何らかの価値を帯びることで、トークンを獲得しようというインセンティブが生じるわけです。つまり、今回子どもたちに付与したトークンも、何かに交換できる機会があり、それが魅力的なものなら、子どもたちの学びを動機づけることができます」と話した。


「学びの仮想通貨」が、入試の在り方を変える
ISIDとシビラが、実証実験の先に描くのは、このトークンを「より高度な教育を受ける機会」に替えられる未来だ。… 続きを読む