突然だが、現在、イタリアの高級スポーツカー「フェラーリ」が提供するメーカー保証は何年か、ご存知だろうか?(正解は本文中で)
一昔前までであれば、“イタリア車はすぐに壊れる”とか、“今日までは動いていたが、明日はエンジンがかからないかもしれない“といったイメージを持たれていた方もおられることだろう。
現在は、それぞれのメーカーがグローバルに構築されたサプライチェーンを通して、より高品質な部品の調達や組み付けなどを行なえるようになっており、品質は著しく向上している。イタリア車でも、例外ではない。
サプライチェーンでの連携は、品質の向上と共に、コネクテッドやMaaSなどと呼ばれる外部のITサービスとの連携によって、新たな価値を生み出している。同時に、その連携に綻びがあれば、本連載を通して述べてきた「サプライチェーン・リスク」を招く可能性もある。
ITが繋ぎ合わせるのは新たな価値だけでない。他所からリスクをもたらす可能性もあるということだ。あらゆるモノやコトがITで繋がっていくという一連の変革、ITがもたらすイノベーションは、新しい産業だけに起こっていることではない。既存の産業にもITが組み入れられていく。当然といえば当然のことだ。
しかし、筆者が自動車メーカーやサプライヤー、研究者らと意見を交わしてきた経験からいえば、ある障壁が原因となり、自動車産業とIT産業との円滑な連携は、阻害されている。その障壁とは、自動車産業とIT産業との間にある、「相互の理解不足」である。業界の多くの人も、口を揃えてそう言う。
なぜ、自動車産業とIT産業の間で、理解不足が発生するのだろうか?今回はその主な要因について、いくつか触れていきたい。
変革していくスピード
冒頭の質問、伊フェラーリのメーカー保証の答えは、執筆時点においては、新車購入時から15年間のメーカー保証が提供されている。
同社に限らず、5年から10年程度のメーカー保証を提供する自動車メーカーは多い。ITの世界での15年前といえば、Windows XP が全盛の時代だ。既に同製品のサポートは終了している。自動車がどれほど長い期間にわたって保証されているのか、お分かりいただけるだろう。
なにもここで、保証期間の長い自動車産業が素晴らしく、保証期間の短いIT産業がけしからん、と言いたいわけではない。なぜ自動車とITとで、このような違いが生じてくるのかということを考えてみたい。
理由の一つとして、… 続きを読む… 続きを読む