2018年11月、日産自動車の前会長カルロス・ゴーン氏が逮捕されるというニュースが日本中に衝撃を与えました。
ゴーン氏にかけられている容疑の一つは、私的な株式投資の損失約18億円を日産に移転したという「特別背任罪」です。ゴーン氏は「会社に損害を与えていない」として、容疑を全面的に否定して争っています。
実はこの特別背任罪は、あらゆる職場に潜んでいます。「会社のため」と思って行動したことでも、特別背任罪の容疑をかけられるおそれがあります。
今回は、どのような行為が特別背任罪に当たるか、ビジネスリーダーが日頃から気を付けるべき対応策を紹介します。
「特別背任罪」は、そもそも「背任罪」と何が違う?
「特別背任罪」を理解するためには、まずは「背任罪」を理解する必要があります。
背任罪は、一言でいうと「会社に損害を与えた罪」です。「あえて」「意図的に」会社に損害を与えたことを罰する罪であるため、うっかりしたミスによって会社に損害が生じても、背任罪には当たりません。
背任罪は、パートやアルバイトを含む、全ての従業員が対象となります。その中でも、会社の中で重要な役職にある人物が背任を行った場合は、特に責任が重いことから、会社法によって刑が加重されています。これが「特別背任罪」です。
特別背任罪の対象となるのは、取締役、会計参与、監査役、執行役、発起人や支配人、検査役等です。これらの役職に付いていない場合でも、これらの役職の人々に働きかけて、会社に損害を与えると、特別背任罪の共犯として処罰されます。
特別背任罪の法定刑は重く、10年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金が課されます。犯罪として罰せられるだけでなく、職場規律違反として懲戒解雇の対象になります。さらに、会社や株主から民事上の損害賠償責任を請求されるおそれもあります。
有罪になるケースと無罪になるケースを分けるポイントとは
実際に過去に有罪となった事件としては、ある会社の会長が海外のカジノで借金を負い、その個人的な借金の返済として、子会社の資金を流用したケースがあります。
他にも、倒産寸前の赤字の会社を高額で買収したケースや、回収見込みが無い相手に対して無担保で融資をしたケースが、特別背任罪として罰せられています。
有罪となったケースに共通していることは、… 続きを読む