Bizコンパス

著作権法の大改正で、AI開発がカンタンになる?
2019.01.31

知的財産の今後編

著作権法の大改正で、AI開発がカンタンになる?

著者 田中 靖子

 2019年1月1日から、日本では新しい著作権法が施行され始めました。この法改正により、AIの研究開発を始めとするビジネス上の著作権の利用が、大幅に自由化されました。

 新しい著作権法によって、AI開発の実務にどのような影響があるのでしょうか?今回は、「何が変わったのか」を具体的に紹介しながら、法改正のポイントを紹介します。

 

鑑賞目的ではない著作物が、広く利用可能となる

 今回の法改正のポイントは、3点あります。

 まず第1に、「鑑賞」を目的としない場合に、著作権者の許可を取ることなく自由に著作物を利用することが可能となりました。

 この代表例が、AIによるディープラーニングです。画像認識用のコンピューターに自動学習させるためには、膨大な量の画像を読み込ませることが必要です。本来であれば、画像の著作権者を探し出し、あらかじめ利用許可を取得しなければいけません。

 しかし、ディープラーニングの過程では膨大な著作物が必要となります。権利関係を処理するとなると、それだけでも大きな手間がかかります。

 とはいえ、AIに自動学習させる行為は、 鑑賞そのものを目的とするものではなく、学習のプロセスとして著作物をデータとして処理するにすぎないため、著作権者への損害は大きくありません。そこで、今回の法改正によって一律に合法化されることになりました。

 実は改正前の旧著作権法においても、ディープラーニングに関する規定が設けられていました。ただし、旧法の規定は「統計的」な解析に限定されており、ディープラーニングで多用されている「幾何学的」な解析や「代数的」な解析が対象外になるという問題がありました。

 さらに旧法では、ディープラーニングが許可されるケースとして、データの収集からモデル生成までの一連の流れを、「同一事業者が」 全て行う場合のみに限定されていました。このため、複数の事業者が共同開発する場合は対象外となり、たとえば学習用のデータセットを作成し、他社に販売する、といったようなことはできませんでした。

 今回の改正により、上記の2つの問題はいずれも合法化されました。今後は、複数の企業がディープラーニングの学習プロセスを分担することが可能となります。機械学習のためのデータセットを作成して他社に販売したり、ネットワークを通じて譲渡することが可能となります。

 加えて、今までは学習で使用したデータセットは、速やかに廃棄しなければいけませんでした。今後は使用済みのデータセットを他社に販売して利益を上げることが合法となるため、ビジネス戦略の一つとして活用できます 。

 

「鑑賞を目的としない場合」とは

 第2に、AIの学習プロセスそのものだけでなく、研究開発に付随する著作物の利用が広く自由化されました。

 例えば、… 続きを読む… 続きを読む

続きを読むには会員登録が必要です

田中 靖子

田中 靖子

法律家ライター

東京大学卒業後、2009年に司法試験に合格。弁護士として知的財産業務、会社設立等のビジネス関連の業務を扱う。現在は海外に在住し、法律関連の執筆や講演を行っている。

関連キーワード

SHARE

あなたへのおすすめ

AIチャットボットを活用し応対品質向上に取り組む ドコモ

2019.01.16

問い合わせ件数増加による応対コスト増の課題を解決

AIチャットボットを活用し応対品質向上に取り組む ドコモ

DNPとNTT Comがつくる対話型AIを活用した新しい消費体験とは

2018.12.07

AIを活用して小売をサポートするビジネスモデル

DNPとNTT Comがつくる対話型AIを活用した新しい消費体験とは

なぜフィデリティ投信は「AI翻訳」を導入したのか

2018.08.31

AIでビジネスの課題を解決する

なぜフィデリティ投信は「AI翻訳」を導入したのか

IoTとAI活用で危険を防ぐ、見守りサービス「みもり」

2018.08.08

IoT/AIを活用したサービス開発の裏側

IoTとAI活用で危険を防ぐ、見守りサービス「みもり」