人工知能(AI)でこれから先の未来が大きく変わるという話をすると「あまり実感がわかない」「周囲でそんなにビジネスが大きく変わったという話を聞くこともない」という反応が返ってくることがよくあります。

 皆さんがそのような感覚を抱くのは理由があります。実はAI革命がはじまるための条件が、今はひとつだけ欠けているのです。だから変化の実感がない。そしてそのひとつだけ欠けたピースがパズルのようにはまるのが2020年。このタイミングを過ぎると、AI革命が本格的に、そして誰にでも実感できる形で始まるのです。今日はそのことをお話ししましょう。

 

2020年に始動する新しい通信ネットワーク

 さて本題です。AI革命が始まるために欠けている最後のピースとは、実は携帯電話の5G(第五世代)ネットワークです。これが来年、2020年にサービス開始される計画になっています。

 5Gのネットワークはこれまでとは何が違うのでしょうか。もちろんこれまでの第四世代のネットワークと違い、スピードは最高で10Gbpsとこれまでの10倍の速さ。モバイル通信が光ファイバー並に速くなります。

 しかし重要なことはもっと他にあります。ひとつは多数同時接続といって1平方キロメートルの中に100万台の端末が、省電力で同時に接続できるようになることです。さらにもうひとつ、「超低遅延」といって、通信の遅れが1ミリ秒単位に抑えられる点も特徴です。

 このふたつがとても重要なことで、簡単に言えばこの特長によってIoT、つまり物が本格的にインターネットにつながり、そのことによって社会の様々なものが遠隔操作できるようになったり、これまで手に入らなかった情報がクラウドに吸い上げられるようになるのです。

 実はAI同様、IoTという言葉は、有名な割に、まだ具体的なビジネスを変えているイメージが少ないワードです。その理由は、現行の4GのネットワークではIoTを本格的に実現することが難しいから。このボトルネックが解消されるのが2020年ということなのです。

 ではなぜIoTが実現すると、AI革命が起きるのでしょう。このふたつの言葉の間にはどのような関係式があるのでしょうか。

 

AIを育てるものはビッグデータである

 2020年に携帯電話ネットワークの5Gが始まる。そうなると世の中にIoTが本格的に始まるようになる。たくさんの機器や部品が省電力でネットワークにつながることができる。しかしなぜそのことがAI革命につながるのでしょうか。

 実はAIには、これまでのソフトウェアと違う特徴があります。“どのようにプログラミングするかどうか”以上に、“どのように育てるか”で、その性能が変わってくるのです。

 たとえば「アルファ碁」という囲碁の世界チャンピオンを打ち破った人工知能がありました。このアルファ碁は、過去のプロの囲碁の勝負を記録した莫大な棋譜を読み、そこから学んでいくことで、わずか数年で人間のトップ棋士よりも強い人工知能に育ちました。

 しかし、もしアルファ碁に、中学校の囲碁同好会の棋譜を与えたとしたらどうでしょう。… 続きを読む

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鈴木貴博

鈴木貴博

百年コンサルティング株式会社代表取締役

経営戦略コンサルタント。東京大学工学部卒。ボストンコンサルティンググループ等を経て2003年に独立。過去20年にわたり大手人材企業のコンサルティングプロジェクトに従事。人工知能がもたらす「仕事消滅」の問題と関わるようになる。経済評論家としてメディアなど多方面で活動している。

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