Bizコンパス

「4年に一度じゃない。一生に一度だ。」を生み出したラガーマンの矜持
2019.06.06

スポーツ・フロントライン第3回

「4年に一度じゃない。一生に一度だ。」を生み出したラガーマンの矜持

著者 Bizコンパス編集部

「4年に一度じゃない。一生に一度だ。」――昨今、電車の中吊り広告や街頭のポスターなどでよく目にする、ラグビーワールドカップ2019日本大会の公式キャッチコピーです。

 このコピーを生み出したのが、クリエイターの吉谷吾郎氏です。自身も高校・大学とラグビー部に所属し、ラグビーの楽しさもつらさも熟知しています。コピーには、そのようなラガーメンだからこその思いが込められています。

 吉谷氏に、キャッチコピーに込められた思いや、ラグビーワールドカップ2019日本大会への期待を聞きました。

 

「4年に一度じゃない。一生に一度だ。」にはどんな思いを込めたのか

 2019年9月の開幕を控え、ラグビーW杯2019日本大会のキャッチコピーを目にする機会が多くなってきました。このコピーを作成した株式会社パラドックスの吉谷吾郎氏は、コピーの反響を語ります。

「あのコピーについては『いい言葉ですね!』と言ってくれる人もいれば、『一生に一度とは限らないのでは』という人もいます。賛否両論ありますが、話題になっていることはありがたいですね。ただ、このキャッチコピーを書いた自分がエライのではなく、そもそもラグビーW杯を日本に持ってこようと志を胸に企画した人、それを実現させようと世界中を走り回った人がエラくて、そんな希少性の高いイベントだったからこそ書けたコピーであったと思っています。

 また、さまざまな制約をクリアしてこのキャッチコピーを世の中に送り出してくれた大会組織委員会のみなさんのおかげです。いい企画や事業そのものに価値があって、そこに志やアイディアがきちんと練り込まれていれば、表現はおのずとよくなると実感しました」(吉谷氏)

 通例コピーを作る際は、まず何百案も考えて、検討を重ねて練り上げていくと吉谷氏は言います。しかし、今回のコピーは最初に浮かんだ案とのこと。どうして、そのようなコピーが出てきたかというと、自身の死生観に由来するのではと分析します。

「『一生に一度だ。』というメッセージには、いまこの瞬間は一生に一度という思いを込めました。スティーブ・ジョブスが、スタンフォード大学の卒業式で行った『ハングリーであれ。愚か者であれ』という有名なスピーチの中にも、『毎日をそれが人生の最後の一日だと思って生きれば、その通りになる。自分はまもなく死ぬという認識が、重大な決断を下すときに一番役に立つ』というくだりがあります。以前からその言葉に感銘を受けていたので、コピーにも反映されているのかもしれません。

 ただ、実際に2019年3月時点でチケット収入の見込みは290億円で2002年サッカーW杯日韓大会の入場料収入約250億円を上回っているそうです。このコピーに背中を押されてチケットを購入された方がいたとすれば大会に少しでも貢献することができて嬉しいです」

 吉谷氏はコピーライターやプランナー、クリエイティブ・ディレクターとして、企業のブランディングや広告制作などに携わっています。「仕事は何ですか」と聞かれたら、「意味を作り出す仕事です」と答えるそうです。

 そのような考え方のルーツは、ピーター・ドラッガーのマネジメント論にある石工の話にあります。4人の石工に「あなたは何をしているのか」と尋ねると、1人目は「石を積むことで生活している」、2人目は「腕のいい石工の仕事をしている」、3人目は「国で一番の教会を建てている」、そして4人目は「街の人々の心のよりどころを作っている」と答えたというもの。仕事は同じでも、それぞれの石工にとって仕事に対する意味付けが違っているという話です。

「仕事では、『言葉で企業の目的や事業の意味を作ること』を常に意識しています。同じ物事でも光の当て方を変えると、意味が変わってきます。今回のコピーでいうと、『4年に一度』はいわば単に石を積んでいる状態。そこに『一生に一度』という意味を加えました。意味を与えることで受け手にとっての意義やメリットを高めたわけです」

 

大学を卒業したら、ラグビーには二度と関わらない

 吉谷氏は高校、大学とラグビー部に所属していましたが、中学までは水泳選手として全国7位の成績を残すなど注目を集めていました。… 続きを読む… 続きを読む

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