2015年10月、文部科学省の外局としてスポーツ庁が設置されて3年。それ以前はスポーツ振興ならば文部科学省、健康増進は厚生労働省、産業化は経済産業省というように、関係省庁がそれぞれの立場でスポーツに関わっていました。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、スポーツに対する関心が高まる中、長寿命化による健康ニーズの拡大など、日本国民にとってスポーツの役割が多様化しつつあります。そのような変化を受け、スポーツ政策もスポーツの役割を見直し、スポーツを通じて社会を発展させていくことが求められています。

 

“人を幸福にする”こともスポーツの意義

 スポーツ庁の役割について、スポーツ庁の忰田康征(かせだやすゆき)・参事官(民間スポーツ担当)付参事官補佐は、以下のように解説します。

「まずは、各省庁が実施しているスポーツに関連する政策に“横串を刺す”ということが挙げられます。さらにスポーツに関わる人や見る人・する人・支える人がより幸せな人生を送れるようにすること。健康増進や地域活性化、国際的な地位向上など、スポーツを通じた社会貢献の推進も役割といえます」

 スポーツの目的として、日本人が思い描く一般的なイメージは、教育の一環や体力・競技力の強化ではないでしょうか。トップアスリートや競技団体は、オリンピックをはじめとする国際大会でのメダル獲得を目指して、スキルを高めるべく研さんを重ねます。もちろん、それが間違いというわけではありません。

「しかしスポーツには違う一面もある」と忰田氏は話します。「WHO(世界保健機関)は『健康』を、身体的、精神的、社会的ウェルビーイングが満たされた状態と定義しています。そのすべてにスポーツは貢献できると考えています。」。日本のスポーツは多くの場合、体育の授業や部活動が起点となるために、フィジカルフィットネスに偏重していたといえるかもしれません。

「スポーツの語源は、ラテン語の“deportare(デポルターレ)”に由来すると言われています。その意味は気晴らしや楽しみ、遊びということです。スポーツを通じて心身が健康になるだけではなく、ストレス解消や社会や人とのつながりができるソーシャルという要素も加えられたのが、WHOが定義するところの『健康』となります」。そのようなスポーツに対する価値観が再認識され、浸透していけば、スポーツの産業化も異なった進展を見せるのではといいます。

 スポーツ庁では、発足を契機にスポーツをビジネスや産業として活性化させることを目指し、この3年間は具体的な政策の実施とともに情報収集や基礎調査を行い、具体的な計画やビジョンに落とし込んできました。

 スポーツ振興については、1人でも多くの方がスポーツに親しむ社会の実現を目的として、2018年9月に「スポーツ実施率向上のための行動計画~『スポーツ・イン・ライフ』を目指して」を策定しています。また、スポーツ観戦の拠点であるスタジアムやアリーナを、スポーツを通じた地域・経済活性化を実現する基盤として運営・管理することを目指す「スタジアム・アリーナ改革」については、ガイドブックを2017年6月に発表しています。

「スタジアム・アリーナ改革は、現在構想中のものが、スポーツ庁で把握しているだけでも全国で73件あります。2025年までには、そのうち20件は実現させたいです。スポーツの産業化に加えて、地域の活性化にも貢献することになりますので」と忰田氏は、政策の推進を見据えます。

 

スポーツをマーケティングや技術実証の場に活用

 勝つことや厳しい訓練でスキルを上げていくのもスポーツならば、仲間と楽しむのもスポーツです。忰田氏は、スポーツ庁に着任する前に留学したオーストラリアでの経験を振り返ります。… 続きを読む

全文(続き)を読む

続きを読むにはログインが必要です。

まだ会員でない方は、会員登録(無料)いただくと、続きが読めます。

Bizコンパス編集部

Bizコンパス編集部

関連キーワード

連載記事