2018.12.24 Mon

 2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催され、2025年には大阪万博が開催されます。このことで、景気低迷が続く日本にも明るい話題が出てきた、と思っている人もいるかもしれません。

 しかし一方では、少々怖い響きの言葉が注目されています。

 それが「2025年の崖」です。

 この言葉は、9月7日に経済産業省が公開した『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』に登場した言葉です。

 この報告書は、デジタル技術を活用した新しいビジネスモデルの参入がゲームチェンジを起こそうとしている時代になっているにもかかわらず、日本では経営者の理解不足や既存システムが足枷となり、2025年以降には年間で最大12兆円の経済損失を生じさせてしまうという予言の書になっています。

 明るい話題に希望を持つことは良いことですが、ビジネスパーソンとして、より多くの視点から時代を見るためにも、「2025年の崖」について知っておく必要があります。

 

そもそも、DXとは何か

 まず、報告書のタイトルにも使われている「DX」とは何でしょうか。

 DXはデジタルトランスフォーメーション(Digital transformation)の略です。「X」はどこにも含まれていませんが、英語ではしばしば「Trans」を「X」で表す習慣があるため、DXと略されています。

 DXの提唱者であるウメオ大学(スウェーデン)のエリック・ストルターマン教授は、DXについて以下のように定義しています。

The digital transformation can be understood as the changes that the digital technology causes or influences in all aspects of human life.
(デジタルトランスフォーメーションは、デジタル技術が人間の生活のあらゆる側面に影響を与える変化として理解できます)

出典:ストルターマン教授のホームページ

 これをビジネスに当てはめた定義として、経済産業省のレポートでは以下のように表現しています(IDC Japanの調査の引用)。

企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること

 ややわかりにくいですが、簡単に言えば、「あらゆるビジネスはIT化を進めることで、顧客に新しい体験を提供することにより競争力を持つこと」、と言えるでしょう。

 

「2025年の崖」とはどんな崖か

 DXの定義を踏まえた上で、「2025年の崖」について見ていきます。

 報告書では、企業のDXを疎外する要因として、複雑化し、ブラックボックス化している既存の基幹システム(レガシーシステム)が温存されると、そのメンテナンスばかりにコストや人的資源が費やされてしまい、新しいデジタル技術や新しいビジネスモデルに企業資源を投じることができなくなり、グローバルな競争で負けてしまうということが危惧されています。

 この危惧が現実になると、企業は事業機会を失い、2025年~30年の間に12兆円の経済損失が生じると試算しているのです。その場合、2025年には21年以上稼働しているレガシーシステムが6割を占めると予想し、これを刷新する必要があるとしています。

 ちょうどその頃になると、団塊の世代が… 続きを読む

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地蔵 重樹

地蔵 重樹

フリーライター

ニュースサイトやオウンドメディアなどのWebコンテンツや、書籍のライティングを行う。著書に『〈アウトライン記述法〉でA4一枚の文書がサクサクつくれる本』(日本実業出版社)などがある。

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