2018.12.03 Mon

 わずか7分で新幹線の清掃を完了し、“セブン・ミニッツ・ミラクル”と世界から注目される会社があります。それが東日本旅客鉄道グループの清掃会社である株式会社JR東日本テクノハートTESSEI(以下、TESSEI)です。同社は清掃の品質だけでなく、スタッフたちのさわやかな見送りも、顧客満足の鏡と賞賛されています。しかし、過去にはスタッフの意識など課題も少なくなかったといいます。

 現場のスタッフに誇りと働きがいを与え、TESSEIを生まれ変わらせた仕掛け人、矢部輝夫氏に「働き方改革」の本質を語ってもらいました。

矢部 輝夫(やべ てるお)プロフィール

合同会社おもてなし創造カンパニー代表。元・株式会社JR東日本テクノハートTESSEI おもてなし創造部長(旧・鉄道整備株式会社)。1966年日本国有鉄道入社以降、主に電車や乗客の安全対策を専門にキャリアを積む。2005年にTESSEI に異動となり、取締役経営企画部長に就く。2011年、同社専務取締役に就任。TESSEIでは、常識を覆す様々な施策を導入し、新幹線の清掃会社を「おもてなし集団」へと変革させた。2015年に退職し、現職。現在はおもてなしや組織変革のプロとして、講演や企業研修に携わる。

 

「働き方改革」よりも先に取り組むべきことがある

――現在盛んに議論されている「働き方改革」について、どのようなご意見をお持ちですか。

 このままでは、「働き方改革」ならぬ、上から目線の「働かせ方改革」になるのではと危惧しています。もちろん、働き方について、国が目標や計画を示すことは必要です。しかし、それだけでは、当の働く人の心は動かないでしょう。いまの論議には、どうやって働く人に「働きがい」や「生きがい」、「誇り」を持たせるのか、という視点が決定的に不足していると感じています。

――「働き方改革」よりも、先に「働きがい改革」が必要だということですか

 TESSEIが手がける新幹線の清掃は、一昔風に言うと「3K(キツイ・キタナイ・キケン)」の仕事で、ともすると敬遠されがちです。そんな仕事の現場が活気にあふれ、“奇跡の職場”とまで言われるようになっています。

 人は、どんな仕事でも、「働きがい」や「誇り」を感じられるのです。それがあれば、働き方を改善することは難しくありません。しかし、もしなければ「働き方改革」をいくら叫んでも、お題目にすぎないでしょう。

 

「マネジメント=管理」という常識の罠

――TESSETで取り組んだ「働きがい改革」の成果が実るまでには、どれくらいの時が必要だったのでしょうか。

 私の意図が理解され、その効果が目に見えるようになるまでには、着任してから7〜8年かかりましたね。組織を変えるために、私がリーダーとして意識したのは、ただ1つでした。マネジメント手法です。

「マネジメント」は、日本では「管理」と訳されることが多いですが、この訳し方には昔からずっと違和感があります。私は、「マネジメント」とは、第一義的には、人を管理・監督するのではなく、上の人間が目標をしっかりと指し示し、それを如何にボトムアップで体現させていくかだと考えています。

 それまでのTESSEIは上意下達の組織で、スタッフを管理するという意識が強かった気がします。私はそれを180度転換させました。まずは「TESSEIをともにこんな会社にしよう」と、自らのビジョンを語りかけることからはじめました。

――具体的にはどのようなビジョンだったのでしょうか。

「みんなで創る『さわやか、あんしん、あったか』サービス」

 これが、TESSEIの目指すべきビジョンとして、スタッフに伝えたメッセージです。

 この言葉には、さわやかな身だしなみと、きびきびとした行動で、清潔な空間を提供し、お客様に安心と信頼をお届けするという意味があります。それと同時に、TESSEIのスタッフとの触れ合いが、「あったかな思い出」として、お客様の心に残る“おみやげ”になるようにという願いもこめられているのです。

 それは、我々はただ掃除をするだけでなく、お客様に新幹線の思い出を提供する「トータルサービス」の会社に変わるのだという意思表明でもありました。

 

“外見”を変える、それが意識を変える

――どのようにビジョンを行動へと移していったのですか。

 私がTESSEIに着任し際、一番問題を感じたのが「働きがい」でした。非正規雇用が多かったこともあり、「努力しても報われない」「将来が見えない」という現場の声が多くありました。そこで、みなさんが安心して働けるよう、給与と人事制度に手を入れました。

 まずは、… 続きを読む

全文(続き)を読む

続きを読むにはログインが必要です。

まだ会員でない方は、会員登録(無料)いただくと、続きが読めます。

Bizコンパス編集部

Bizコンパス編集部

関連キーワード