10連休も終わり、気がついたら6月になってしまいました。
さて、令和最初のシリコンバレー通信では、手品みたいなスマートシティソリューションをトップに、セキュリティ、SD-WAN、コネクテッドカーに関する情報をお伝えします。
1. センサーのいらないスマートシティソリューション
スマートシティを実現するために、監視カメラなどの無数のセンサーが街に溢れている。交通渋滞回避や事故の調査など、日常生活に恩恵を与えてくれる一方で、多額の投資と時間がかかる。ITS(Intelligent Transport System、高度道路交通システム)はカーナビゲーションとの連携、自動料金支払いシステムに留まらず、自動運転に必要なインフラになるであろう。しかし、ITSを全国津々浦々まで張り巡らせるには、やはり膨大な資金と時間がかかる。
F社(仮名)はそんな社会的課題を解決してくれるスタートアップだ。
F社はデータセンターに専用のハードウェアを設置し、道路の地下に埋められている光ファイバーからの情報を検知して、自動車の走行状態を識別して可視化することができる技術を開発した。
私も最初話を聞いたときは「本当に?」と思ったが、デモを見せてもらうと、思わず「It’s Magic !!」ときいてしまうほどインパクトが大きかった。同社は、ニューヨークやシリコンバレーで既に実験を開始していて、走行中の自動車の速度などの詳細データをダッシュボードに表示できるようになっている。

ML、AIと連携することで、検知した自動車の車種まで特定できるようになるという。検知の精度が気になるところだが、高い精度で検知ができている。何故ならば、自動車がすれ違う様子を車載カメラで撮影した映像とダッシュボードを重ね合わせたデモを見せてもらったが、映像で自動車がすれ違うタイミングで、ダッシュボードに表示された自動車も寸分の狂いもなくすれ違っていた。
光ファイバーの設置方法は様々で、共同溝に他の設備と一緒に設置する場合もあるが、あらゆる設置方法でも対応できるという。
同社のパートナーは誰でもいいというわけではない。光ファイバーの高いマーケットシェアを持っている通信事業者が重要なパートナーとなる。ということで、私に声がかかった。
同社がデータセンターに設置する専用のハードウェアは半径50Kmの範囲の光ファイバーの情報を収集し、収集したデータをAWSで分析し、可視化している。同社のビジネスモデルはSaaSモデルで、自動運転を開発している自動車メーカー、サプライヤー、都市交通管理をしている自治体、都市開発をしているデベロッパー、電力会社、ガス会社などがターゲットユーザーになる。

本社はシドニー。資金調達額は約8M(800万ドル、約8.7億円)で従業員は20人程度。現在はStealth Mode(ステルスモード。製品やサービスを外部に公表せず、事業開始の準備を行うこと)で活動している。そのため活動と情報提供はとても慎重で、投資家以外へのピッチは私が初めてだそうだ。社名を伏せたのはそのためだ。今後は、北米で資金調達をして、北米、ヨーロッパ、アジアの順番で顧客開拓をするそうだ。
2.SD-WANもSaaSの時代に
2013年ごろは誰も見向きもしなかったSD-WANだが、2015年以降、日本でも市場が立ち上がり、導入する企業が増えている。
SD-WANは”0 Touch Provisioning”というキャッチフレーズで市場を拡大してきたが、実際に計画、設計、設置、運用開始までには時間がかかる。”0 Touch Provisioning”は運用の話だ。そんなSD-WANの課題を解決してくれるスタートアップが登場した。ZenLayer社は「SD-WAN_as_a-Service」を提供しているスタートアップで、企業ユーザーごとに設備工事をする必要はない。しかも回線部分はパートナー戦略をとっているため、全世界でサービスを利用することができる。

ZenLayer社のビジネスモデルはSaaSモデルだが、ISPやMSP向けにWhite Lebel(ホワイトラベル。OEMのように、他社ブランドの商品・サービスとして販売すること)でサービスを提供している。CPE(Customer Premises Equipment; お客様設備)も世界各地のハードウェアベンダーと提携しているため、短期間で顧客のブランドのCPEを世界各地に届けることができるという。
ZenLayer社が会社設立から4〜5年で、少ない自己資金で世界中にサービス展開ができたのは、… 続きを読む