アメリカで「リーガルテック」と呼ばれるスタートアップ企業が相次いで生まれています。リーガルテック(Legaltech)とは、Legal(法律)とTechnology(テクノロジー)を合わせた造語で、法律の領域で事業を展開するテック系企業のことです。

 AI、IoT、ビッグデータなどの新しいテクノロジーの発達と普及により、金融、保険、医療、教育などの様々な分野で新たなビジネスが生まれていますが、法律の領域でもAIやビッグデータなどの技術を活用した各種のニュービジネスが生まれてきています。

 今回紹介するロス・インテリジェンス社も、そんなリーガルテック・スタートアップ企業の一社です。

 

なぜ法律の世界にAIが必要なのか

 ロス・インテリジェンス(Ross Intelligence)は、2014年9月に設立された、サンフランシスコに拠点を置く企業で、法律の分野で用いられるAI「リーガルAI」を開発しています。

 同社を立ち上げたのは、弁護士で起業家のアンドリュー・アルーダ氏と、同じく起業家のジモ・オヴィアゲール氏、コンピューターエンジニアのバーデスト・オリオ氏の三人。同社設立前、新人弁護士として法律事務所に勤務していたアルーダ氏は、先輩弁護士の下働きとしてやらされる「リーガルリサーチ」の仕事にうんざりしていました。リーガルリサーチとは、依頼された案件に類似した過去の判例を検索して結果をまとめたり、調停などの情報を調べて和解するための素案を作成する仕事です。

 アルーダ氏によると、弁護士の仕事の20%はリーガルリサーチに費やされていて、一般的な民事訴訟の場合、相談一件あたり平均で数千ドルものコストがかかってしまうそうです。具体的な例でいえば、ユタ州では、アパートなどの賃貸借物件から立ち退き訴訟を受けた被告の97%が、弁護士の費用が高額なため、弁護士なしで裁判を受けざるを得ないそうです。

 アルーダ氏は、依頼人から相談されるたびに高額な見積もりを提示し、その多くが費用を支払えずに帰ってゆく姿を見てきました。そこで、AIを弁護士の仕事に活用すれば、弁護士の仕事量が軽減でき、コストも下げられると考えました。コストが下がれば、お金のない人でももっと弁護士が利用できます。「法律の民主化」の可能性に目を輝かせた同氏は、上述の二人の仲間と共に会社を立ち上げたのです。

 

AIがどうやって弁護士の仕事をラクにするのか

 AIを導入することによって、リーガルリサーチの方法は、具体的にどのように変わるのでしょうか。… 続きを読む

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前田 健二

前田 健二

フリーランス

東京都出身。2001年より経営コンサルタントの活動を開始し、新規事業立上げ、ネットマーケティングのコンサルティングを行っている。アメリカのIT、3Dプリンター、ロボット、ドローン、医療、飲食などのベンチャー・ニュービジネス事情に詳しく、現地の人脈・ネットワークから情報を収集している。

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