中国配車サービス大手の滴滴出行(ディディチューシン、Didi Chuxing)とソフトバンクは2018年7月、日本で事業を展開するため、ジョイントベンチャー「DiDiモビリティジャパン」を設立した。

 2012年に設立された滴滴は、中国でライドシェア市場を成長させ、今やアリババグループの金融サービス会社「アント・フィナンシャル」に次ぐ世界2位のユニコーン企業(評価額10億ドルを超える未上場企業)に変貌した。

 だが、敵を全て潰したように見えた滴滴は、この1カ月あまり、創業以来の危機に直面している。

 

2度の殺人事件で信用失墜

 今年8月24日、滴滴の相乗りサービス「順風車」の運転手(27)が乗客の女性(20歳)を殺害する事件が発生した。実は5月にも順風車の運転手が乗客女性を殺害しており、3カ月で2度も似たような凶悪事件が起きたことに、中国社会は大きな衝撃を受けた。

 5月の事件の際には、滴滴ユーザーの多くは怒りを示しつつも、「滴滴を使わないと生活できない」と、サービス停止を求める声は大きくなかった。だが、今回はさすがに、女性を中心に「永遠に業務を停止すべき」との声が噴出。滴滴は深夜のサービス提供を一週間停止し、車内の会話を録音するシステムを導入するなど、安全対策の強化に追われている。その後、滴滴の事業は徐々に通常体制に戻っているが、順風車は休止したままで、復活のめどは立っていない。

 

市場独占がずさん運営許す

 2度の事件では、運転手に対するクレームに、カスタマーサービスが適正な処置を取っていなかったり、被害者の友人からの通報を数時間放置するなど、滴滴のずさんな管理体制が次々に明らかになった。その原因として、滴滴が配車サービス市場を独占し、ライバルが存在しないことが指摘されている。

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浦上 早苗

浦上 早苗

海外書き人クラブ所属、中国経済ライター

1998年から2010年まで西日本新聞社記者。その後中国政府奨学金を受け博士留学(専門は経営学)。中国・大連の少数民族向け国立大学で教員。中国経済ニュース、米国経済ニュースの翻訳の他、中国経済関連記事を執筆。法政大学MBA兼任教員。

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