AIが人間の知性を超える『シンギュラリティ(特異点)』は訪れない。
国立情報学研究所でAIの研究を行う新井紀子氏は、著書「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」(東洋経済新報社)にて、AIは人間から多くの仕事を奪う可能性のあるものの、不得意な分野もあるため、人間の知性を超えることはない、と述べています。
それでは、AIが不得意で、人間がAIよりも確実に上回っている能力とは、一体何なのでしょうか。本書では、それを「読解力」と定義しています。そのため、AIには肩代わりできない仕事に就くためには、読解力が不可欠であると指摘しています。
なぜ人間にはAI以上の読解力があるのか、そして、読解力を高めるためにはどうすれば良いのでしょうか。新井氏の著書から読み解きます。
「AIが発達しても残る職業」には、読解力が求められる
前編で紹介した通り、AIはすでにMARCHや関関同立といった大学に合格できるレベルの学力を備えています。しかし、英語のような読解力が求められる科目の成績は、特に悪い傾向にあります。
なぜAIは、読解力が必要な問題を不得意とするのでしょうか。その答えは、AIは基本的に「計算機」だからです。AIは、数字に置き換えて処理できるような仕事しかできません。そのため、文脈を読み解き、意味を考えるような、数字に置き換えられない作業は、大の不得意です。
これはつまり、「意味を考えなければできない仕事」においては、人間はAIに代替されないということです。
そうした「AIに代替されない仕事」の具体的な例として、オックスフォード大学の研究チームは、AIに代替されにくい「10〜20年後まで残る職業」を、ランキング形式で以下のように予測しています。… 続きを読む