人気ビジネス書から読み解くAIの弱点(前編)

AIはMARCHには合格できるけど東大には落ちる

2018.05.09 Wed連載バックナンバー

 このところ「AI(人工知能)」技術の進化が、世間の注目を集めています。ビジネス書でも、AI関連の書籍が人気となっており、AIが人間の知性を超え、世界が一変する「シンギュラリティ(特異点)」がいつ訪れるのか、といった話題の書籍も増えています。

 そんなAI関連の書籍の中で、現在ベストセラーとなっているのが、2月に発売された「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」(東洋経済新報社)です。

 この書籍の著者は、国立情報学研究所でAIの研究を行っている新井紀子氏です。新井氏は「東ロボくん」というAIに、東京大学に合格できるだけの能力を身につけさせるプロジェクトのリーダーも務めており、“東ロボくんの母”とも呼ばれている人物です。

 そんな新井氏は本書にて、東ロボくんをはじめとするAIの優れた能力を認めつつも、実はAIは決して万能ではなく、AIにはできないこともあると述べています。

 新井氏が指摘する、AIができることと、AIができないこととは、一体何でしょうか?

 

AIはMARCHも関関同立も合格できる

 AIができること/できないことを理解するためには、本書で紹介されている東ロボくんの例が参考になります。

 東ロボくんは、先に触れたように、東京大学に入学できるだけの学力を備えたAIの開発を目的としたプロジェクトで、2011年から2016年にかけて研究が行われました。プロジェクトにおける「東大に入れるか/入れないか」の基準は、大学入試センター試験によって判断し、実際に2015年と2016年には、東ロボくんは約40万人の学生と一緒にセンター試験を受けたといいます。

 この結果、東ロボくんは5教科6科目で偏差値「57.1」以上を達成。70%以上の大学で、合格可能性80%を達成したといいます。この「70%以上の大学」には、「MARCH」(=明治大学/青山学院大学/立教大学/中央大学/法政大学)や「関関同立」(=関西大学/関西学院大学/同志社大学/立命館大学)といった有名私立大学も含まれていたといいます。

 東ロボくんも含め、すべてのAIはコンピューター(=計算機)なので、四則演算(+/-/×/÷)は大得意です。東ロボくんは試験問題に対し、適切な四則演算を行い、処理結果を回答として「出力」します。そのため、数学は東ロボくんが最も得意とする科目となります。もちろん計算以外でも、問題を数字化して計算のフィールドに持ち込める問題であれば、東ロボくんは人間よりも速く正確に回答できます。

 

なぜ東大に合格するほどの学力が身につかなかったのか

 しかし、57.1という偏差値は、最終目的である東京大学に入学するためには足りない数値です。なぜ東ロボくんは、人間よりも正確で速く回答できるにも関わらず、東大合格レベルの結果が残せなかったのでしょうか。… 続きを読む

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鮫島 涼

鮫島 涼

株式会社ネクストアド所属の車ライター。車・バイク雑誌の編集者、車広告の審査会社を経てライターとして活躍。現在は、F1の取材や大手中古車販売企業メディアのライティングを担当。

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