EC市場が好調だ。スマートフォンの普及も後押しし、BtoCに限っても15兆円を超える(2016年)。しかし、市場を支える物流インフラには綻びが生じている。急激な物流の増加に対応が追い付かず、配送遅延や配送員の慢性的な残業、残業代未払い問題などの“宅配クライシス”が起きている。

 この問題について前回は、宅配クライシスが起こった背景とその顛末を解説した。そして、今後も宅配個数は増え続ける一方で、それに対応するドライバーが現在以上に不足していくと指摘した。

 そんな時代に、企業はどうやって顧客に商品を届ければ良いのだろうか? 宅配コンサルタントの高山隆司氏が、この宅配クライシス時代を生き抜くヒントを解説する。


 

ヤマトが始めた画期的なサービス「当日配送」の功罪

 2017年9月27日の日経新聞に、アマゾン(Amazon.co.jp)がヤマトの値上げに合意したという記事が掲載された。これまで1個280円といわれていた運賃が、400円台になるという。

 アマゾンはヤマトの物量の10~20%を占めるといわれている。たとえばアマゾンが1~2億個の荷物をヤマトに依頼した場合、150円の値上げとすると、単純計算で最小でも150億円、最大で300億円の利益が吹っ飛ぶことになる。とはいえ、すでにアマゾンは佐川急便には2013年に撤退されていて、ヤマトに頼らざる得ない状況での合意だった。

 佐川の撤退、そしてヤマトの大幅値上げの大きな要因として「当日配送」がある。午前中に注文した商品が当日の夜に配達されるという画期的なサービスだ。しかし、このサービスは宅配ドライバーの熾烈な労働環境のうえに成り立っていた。

 アマゾンのセンターで梱包された荷物はヤマトのハブセンターに直接持ち込まれ、その日の横持便(長距離車両などが積み込みに間に合わない場合などに、他車両が引き取りを代行すること)で配達センターに届く。配達は18:00以降の出発となる。

 佐川のアマゾン撤退で、ヤマトの1人あたりの荷物は約20個増えたと言われている。その多くが18:00以降配達で、さらに不在再配達も夜間に持ち越され、ドライバーは残業なしでは配達完了ができないようになった。それが残業未払いに繋がっていくことになる。

 

アマゾンは現在どのように配送しているのか

 とはいえ、「世界一顧客志向の企業」を目指すアマゾンがサービスを後退させるはずはない。逆に自前の配送網を作ることを加速するのでは? というのが、第1回目でも紹介した、EC・宅配業界の関係者で構成される「宅配研究会」の予測だった。そしてその予測通り、アマゾンは自前の配送網の構築に着手していった。… 続きを読む

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高山 隆司

高山 隆司

株式会社スクロール360取締役

1981年スクロール(旧社名ムトウ)入社以来、36年にわたり通販の実戦を経験。2008年には他社のネット通販企業をサポートするスクロール360の設立に参画、以後、200社を超えるネット通販企業の立ち上げから物流受託を総括。その経験を生かし2015年2月に「ネット通販は物流が決め手!」(ダイヤモンド社)を出版。2016年よりグループ会社「(株)豆腐の盛田屋」の中国進出をサポート、販売チャネルと物流インフラ構築プロジェクトに参画。2017年11月には、中信出版社より「ネット通販は物流が決め手!」の中国語翻訳版が中国にて出版されている。

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