国内のBtoCにおけるEC市場規模が2016年、15兆円を突破した。ここに、ネットオークションやフリマアプリなどのCtoCの市場10兆849億円を加えると25兆円を超える。これらは、日本の国家予算の公共事業費5兆9,763億円や防衛費5兆1,251億円(ともに2017年度)の4倍を超える大きな額である。

 その陰で物流を支えているのが、ヤマト運輸(以下、ヤマトと表記)をはじめとする宅配業界だ。しかし、増加する宅配個数に配送員数などキャパシティが追い付かず、配送の遅延や配送員の残業代未払いなど、様々な問題が噴出した。

 今後、宅配業界はどうなっていくのか? そして、企業は宅配業者とどのように付き合っていけば良いのか?ネット通販企業をサポートするスクロール360の取締役であり、「ネット通販は物流が決め手!」(ダイヤモンド社)など、宅配に関する著書を多数持つ高山隆司氏が、来るべき未来を前後編に渡って解説する。

 

宅配クライシスは3年前に予見されていた

 それは2017年4月25日、日経新聞の一面記事から始まった。ヤマトが27年ぶりに宅配運賃を値上げするという記事だ。さらに、ヤマト最大の大口顧客であるアマゾンにも、大幅な値上げを迫るという。これが宅配クライシスの幕開けであった。

 とはいえ、これは元々業界では予見されていたものだった。さかのぼること3年(2014年)、上野のとあるビルの一室でスタディグループが発足した。その名も「宅配研究会」。10社ほどのネット通販物流の専門家が集まり、将来の宅配クライシス到来にどう備えるかを検討する目的だった。

 前年2013年のEC市場規模は、11兆円で宅配便の個数は36億個。その40%をヤマトが配達していた。当時、ヤマトのセールスドライバーは約5万人だった。3年後にはEC市場はその1.5倍の15~16兆円になると予測されており、ドライバーの絶対数が不足することは目に見えていた。

 ネット通販先進国であるアメリカでは、EC市場規模の拡大に配送インフラが追い付かず、宅配料金も年々上がっていた。宅配研究会は3年前に宅配クライシスが来ることを予見していたのだ。

 

“ブラック”な環境は荷主の過酷な要求から生まれた

 2017年に、宅配クライシスが一気に噴出したのには様々な理由がある。… 続きを読む

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高山 隆司

高山 隆司

株式会社スクロール360取締役

1981年スクロール(旧社名ムトウ)入社以来、36年にわたり通販の実戦を経験。2008年には他社のネット通販企業をサポートするスクロール360の設立に参画、以後、200社を超えるネット通販企業の立ち上げから物流受託を総括。その経験を生かし2015年2月に「ネット通販は物流が決め手!」(ダイヤモンド社)を出版。2016年よりグループ会社「(株)豆腐の盛田屋」の中国進出をサポート、販売チャネルと物流インフラ構築プロジェクトに参画。2017年11月には、中信出版社より「ネット通販は物流が決め手!」の中国語翻訳版が中国にて出版されている。

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