東大大学院・越塚教授に聞く(後編)

「コネクテッドカー」の普及を妨げるものとは?

2018.03.27 Tue連載バックナンバー

 IoT救急車、タクシー配車アプリ、バスロケーションシステムなど、すでにさまざまな実用化事例がある、インターネットへの常時接続機能を備えた自動車「コネクテッドカー」。現在はAIを活用した自動走行技術など、さらに先のステージを見据えた研究開発が進められています。しかし、新しい技術の実用化には、解決に向けて取り組むべき課題もあります。

 これらの課題が解決した場合、社会はどのように変化するのでしょうか。総務省が開催した「Connected Car社会の実現に向けた研究会」の構成員を務めた東京大学大学院情報学環の越塚登教授が語ります。(取材/文/構成 ノーバジェット)

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課題解決のカギを握るのは「5G」と「AI」

 さまざまな実用化事例も出始めたコネクテッドカーですが、今後さらに高度化していくには、解決すべき課題も少なくありません。私は大きく分けて2つの課題群があると考えています。1つは技術的な課題、もう1つは制度面の課題です。

 技術的な課題として、最初に解決が望まれるのが、自動車と外部を接続するモバイルネットワークのさらなる高速化・大容量化です。現在のモバイルネットワークは「4G(4th Generation=第4世代移動通信システム)」が主流です。4Gは前世代の3Gに比べて高速・大容量通信を実現し、高速で移動している最中でも通信が可能です。

 しかし最大通信速度は低速移動時で1Gbpsであり、大容量化が進むデータを通信する際には物足りず、遅延が発生する場合があります。例えば外部と同時に多接続してデータをやりとりしなければならない自動走行技術の場合、わずかな遅延の発生が重大な危険を招く恐れも考えられます。

 こうしたモバイルネットワークの課題を解決するために、2020年の実用化を目指して開発が進められているのが「5G(5th Generation=第5世代移動通信システム)」です。5Gは10Gbps以上の通信速度、1ミリ秒未満の低遅延、99.999%の信頼性を目標としており、瞬時の判断が必要となる自動走行技術のようなコネクテッドカーには必須の要件です。

 ちなみに、日本を含む世界各地で自動運転技術の実証実験が現在行われていますが、モバイルネットワークをはじめとする技術的な課題から、最高速でも30km/h程度の低速走行しかできていません。

 自動走行技術ではAIによる運転支援システムの高度化が不可欠です。自動車に取りつけられたセンサー、道路上に設置されたITS(Intelligent Transport Systems=高度道路交通システム)、あるいは交通管制システムなどのデータから状況を瞬時に分析・判断する能力を備えたAIの実用化が待たれます。

 現在の交通事故は、ドライバーの人的な運転ミスで発生するケースが大半ですが、AIならば障害物を認識して衝突を回避することも可能になるでしょう。交通事故が完全にゼロとなることはないでしょうが、AIのほうが人間よりも認知能力に優れ、間違いが少なくなると考えられています。

 

「人」なのか「機械」なのか、法整備も重要

 技術的な課題はデータにもあります。特に重要なのが、… 続きを読む

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越塚登

越塚登

東京大学大学院 情報学環 教授

東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。東京工業大学理学部助手、東京大学大学院 助教授などを経て、2009年から現職。2017年4月からユビキタス情報社会基盤研究センター長、ダイワユビキタス学術研究館長を兼務。ユビキタスコンピューティング、IoTの専門家としてコネクテッドカーをはじめ、空間情報サービス、デジタルミュージアム、未来住宅などの応用に取り組む。

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