CDやDVDレンタルなどの事業を行う「TSUTAYA」や「T カード」でよく知られているカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(以下、CCC)。最近では、豊かな生活を提案することを目的とした新しい小売業業態「T-SITE」で知られる企業でもある。同社はレンタル業から出発し、「レンタル+物販複合店」の時代を経て、現在ではT-SITEのような業態を各地で展開するようになった。
CCCが提案するT-SITEのような新小売業態は、単におしゃれであるだけではない。実際に、同社に大きな利益をもたらしている。たとえば「代官山 蔦屋書店」は、郊外型の書店と比較して、坪当たり約3倍の売上を計上している。
CCCの指揮を執る創業社長の増田宗昭(ますだ・むねあき)氏は、どのような発想で事業を活性化し、発展させているのだろうか。
上場を廃止してまで実現した「T-SITE」の開店
CCCは、売上規模約2,551億円 (2017年3月期連結決算)の非上場企業だ。かつては東証一部に上場していたものの、2011年に700億円もの資金を用いてマネジメント・バイアウト(MBO)を実施し、増田氏自らの意思で上場を廃止した経緯がある。
なぜ、非上場にしたのか? 当時の報道では「中高年層を意識した次世代店舗の開発や中国進出、新規事業への積極投資が必要と判断。非上場化で経営の自由度を高め、事業の再構築を急ぐ。」(日経オンライン、2011年2月3日付)とある。同年12月5日に代官山蔦屋書店(T-SITE)を開店している。
このことから、増田氏は「この代官山プロジェクトが株主から理解されないだろう」と思っていたことが推測できる。
確かに、代官山がいかに有名なファッションの街であったとしても、通行者が多くない旧山手通り沿いに、しかも、先行きが不透明な書店業態を開店することは、冒険と見られても仕方ない。
しかし、結果的にCCCの書籍・雑誌の売上高は1,308億 円 (2016年1~12月)と、国内最大規模を誇るようになった(「TSUTAYA」調べ)。では、このような新業態を当時の増田氏はどのように発想したのだろうか。
カルチュア(カルチャー)は生活インフラである
増田社長の発想を読み解く前に、… 続きを読む… 続きを読む