「ミルボン」という会社名に、男性諸氏はあまりなじみがないかもしれない。しかし、美容院に通う女性にはよく知られたブランド名だろう。美容室向けヘア化粧品専業の同社は、東証一部上場企業。この12月1日、8,280円と上場以来の高値をつけ、好調な業績を示している。
今期決算では5期連続で過去最高益を更新すると伝えられており、売上高も1996年以来20年以上も連続で伸長し続けている。企業業績比較分析サイト「Suik.jp」によれば、同じ化粧品を扱う他社、花王・資生堂・コーセー・ポーラよりも、ミルボンは高く評価されているほどだ。
なぜミルボンは、このように高い業績を維持し続けていられるのだろうか。
後発ながら外資系企業を追い抜く企業がある
ミルボンは、主に美容院と顧客する、ヘアケアの「プロユース市場」において、売上ナンバーワンである。売上高は291億3400万円(2016年12月期連結)。富士経済調べではこの分野で約13%のシェアを占めている(2015年当時)。第2位は日本ロレアル株式会社、第3位は資生堂プロフェッショナル株式会社であり、ミルボンは名だたる世界の化粧品メーカーを相手に堂々たる地位を占めていることになる。
こうしたミルボンの日本市場での健闘ぶりは、グローバルに見ても特殊である。諸外国のプロユース市場では、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G。ヘアケアブランド「ウエラ」)、ロレアル、ヘンケルといった名だたるグローバル企業が上位を占めているのが普通だからだ。つまり、ミルボンが市場の最大手という現象は、ほぼ日本市場だけと言っても過言ではない。
かつては日本でも外資系メーカーがこの市場でもトップであった。つまり、ミルボンは後発メーカーとして外資を追い抜いたことになる。
ミルボンの歴史を簡単に振り返ってみよう。1960年、化粧品(コールドパーマ剤・シャンプーなど)の製造販売を目的に、大阪市東淀川区にユタカ美容化学株式会社が創業。1965年ミルボンに社名が変更され、1967年には、パーマネント用ロッドを開発し、コールドパーマ剤メーカーとして知名度を向上させた。1971年に中興の祖とでもいうべき鴻池一郎氏(1937-2011)が、ミルボンの代表取締役に就任している。
強さの源泉(1)美容室の発展を支援する「FPシステム」
ミルボンの強さはどこにあるだろうか。その強さを支える仕組みは2つある。1つはフィールドパーソンシステム(FPシステム)。もう1つは、TAC(TargetAuthorityCustomer=顧客代表制)製品開発システムという仕組みだ。
フィールドパーソン(FP)とは、… 続きを読む