田中洋が語る、世界に通じるブランディング(第3回)

後発でも外資系企業を追い抜いた「ミルボン」の強み

2017.12.12 Tue連載バックナンバー

 「ミルボン」という会社名に、男性諸氏はあまりなじみがないかもしれない。しかし、美容院に通う女性にはよく知られたブランド名だろう。美容室向けヘア化粧品専業の同社は、東証一部上場企業。この12月1日、8,280円と上場以来の高値をつけ、好調な業績を示している。

 今期決算では5期連続で過去最高益を更新すると伝えられており、売上高も1996年以来20年以上も連続で伸長し続けている。企業業績比較分析サイト「Suik.jp」によれば、同じ化粧品を扱う他社、花王資生堂コーセーポーラよりも、ミルボンは高く評価されているほどだ。

 なぜミルボンは、このように高い業績を維持し続けていられるのだろうか。

 

後発ながら外資系企業を追い抜く企業がある

 ミルボンは、主に美容院と顧客する、ヘアケアの「プロユース市場」において、売上ナンバーワンである。売上高は291億3400万円(2016年12月期連結)。富士経済調べではこの分野で約13%のシェアを占めている(2015年当時)。第2位は日本ロレアル株式会社、第3位は資生堂プロフェッショナル株式会社であり、ミルボンは名だたる世界の化粧品メーカーを相手に堂々たる地位を占めていることになる。

 こうしたミルボンの日本市場での健闘ぶりは、グローバルに見ても特殊である。諸外国のプロユース市場では、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G。ヘアケアブランド「ウエラ」)、ロレアル、ヘンケルといった名だたるグローバル企業が上位を占めているのが普通だからだ。つまり、ミルボンが市場の最大手という現象は、ほぼ日本市場だけと言っても過言ではない。

 かつては日本でも外資系メーカーがこの市場でもトップであった。つまり、ミルボンは後発メーカーとして外資を追い抜いたことになる。

 ミルボンの歴史を簡単に振り返ってみよう。1960年、化粧品(コールドパーマ剤・シャンプーなど)の製造販売を目的に、大阪市東淀川区にユタカ美容化学株式会社が創業。1965年ミルボンに社名が変更され、1967年には、パーマネント用ロッドを開発し、コールドパーマ剤メーカーとして知名度を向上させた。1971年に中興の祖とでもいうべき鴻池一郎氏(1937-2011)が、ミルボンの代表取締役に就任している。

 

強さの源泉(1)美容室の発展を支援する「FPシステム」

 ミルボンの強さはどこにあるだろうか。その強さを支える仕組みは2つある。1つはフィールドパーソンシステム(FPシステム)。もう1つは、TAC(TargetAuthorityCustomer=顧客代表制)製品開発システムという仕組みだ。

 フィールドパーソン(FP)とは、… 続きを読む

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田中 洋

田中 洋

中央大学ビジネススクール(大学院戦略経営研究科)教授

1951年名古屋市生まれ。京都大学博士(経済学)。日本マーケティング学会会長。マーケティング論・ブランド論・広告論・国際マーケティング論専攻。(株)電通でマーケティングディレクターとして21年間実務を経験して後、法政大学経営学部教授、コロンビア大学研究員などを経て、2008年より現職。社会人のためのビジネススクールでマーケティングとブランドの教鞭を執る。以下のグローバル企業への戦略アドバイスや社内講師を行っている。GE、マイクロソフト、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、メルセデスベンツ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、資生堂、味の素、日清食品、ソニー、日立製作所、パナソニック、ニコン、日本銀行など。

主著として『ブランド戦略論』(2017)、『消費者行動論』(2015)、『マーケティングキーワードベスト50』(2014)、『ブランド戦略全書』(編著、2014)、『ブランド戦略・ケースブック』(編著、2012)、『マーケティング・リサーチ入門』(共著、2010)、『消費者行動論体系』(2008)、『企業を高めるブランド戦略』(2002)など。日本広告学会賞(3回)、中央大学学術研究奨励賞、日本マーケティング学会ベストペーパー賞、東京広告協会白川忍賞などを受賞。
(編集:株式会社ネクストアド)

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