田中洋が語る、世界に通じるブランディング(第1回)

無印良品の好調を支える「ムダ」と「ムリ」の力

2017.10.23 Mon連載バックナンバー

好調な業績に潜む「ナゾ」

 「無印良品」が絶好調である。2016年度決算では「連結売上高3,000億円、海外売上高1,000億円」を達成し14期連続の増収、その上、過去最高益も達成している。

 無印良品がこれほど好調なのはなぜだろうか。

 ひとつには、「化粧水アロマディフューザー」、「シリコーン調理スプーン」、「不揃い宇治抹茶チョコがけいちご」など、個別のヒット商品の積み上げがある。

 それ以上に、積極的な海外進出の影響も大きい。中国では2016年12月に200店舗目をオープン、2016年8月にはインドで「MUJI Palladium」という店舗をオープンした。海外店舗を合計すると、26の国・地域で403店舗というネットワークをもつ存在となった。2017年度中には海外の店舗数が日本国内を上回る見込みであるという。

 ところで、無印良品というブランドにはいくつかの「ナゾ」がある。

 無印良品は、アパレルから家具、「家」に至るまで、多くのカテゴリーに商品アイテムを展開できる。その上、どのカテゴリーの商品も「無印良品」らしさが感じられるのだ。なぜなのだろうか。

 同じブランド名をつけておけば、良いという問題ではない。かつてWILLというブランドがあった。1999年に創設されたこのブランドには花王、トヨタ自動車、アサヒビール、松下電器産業(現パナソニック)、近畿日本ツーリスト、コクヨ、江崎グリコなどのそうそうたる企業が集結して、異なったカテゴリーから商品が発売された。しかしこの試みは2004年に終焉を迎える。

 WILLが消え去った原因として「さまざまな商品におけるWILLブランドとしての何か」がなかったことが挙げられる。ブランドには、ブランドネーム以上にブランドとしての何かが必要とされるのだ。

 WILLが成し得なかったことを達成している無印良品の強さはどのような点にあるのだろうか。

 

ブランドの「発想」とは

 無印良品ブランドの強さのひとつの要因は、もともとの「発想」にあるのではないか。無印良品のウェブサイトには次のように書かれている。

「無印良品は1980年の日本に、消費社会へのアンチテーゼとして生まれました。

 当時の日本は、資本の論理が優先され、『売るため』にモノが本質から離れていた時代。

 無印良品は、そのような状況への批評を内側に含むものとして、『無印』という立場に『良品』という価値観をつけて誕生した概念です。」

 無印良品を創設したのは、かつて「セゾングループ」のリーダーであった故・堤清二氏とデザイナーの田中一光氏であった。堤氏は著書『無印ニッポン』(堤清二・三浦展著、中公新書)の中で無印良品を「反体制商品」と考え、社内で提案したものの、最初は受け入れられなかったと書いている。

 興味深いことに、堤氏は、無印良品のもともとの「反体制」的発想を、アメリカ式の資本主義の真っただ中において得たことである。1970年代のセゾングループ(当時は西武流通グループ)は、米国の当時の流通業の最先端であったシアーズ・ローバック社と提携していた。堤氏たちは、ある日シカゴのシアーズ本社を訪問して驚くような光景を目にした。… 続きを読む

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田中 洋

田中 洋

中央大学ビジネススクール(大学院戦略経営研究科)教授

1951年名古屋市生まれ。京都大学博士(経済学)。日本マーケティング学会会長。マーケティング論・ブランド論・広告論・国際マーケティング論専攻。(株)電通でマーケティングディレクターとして21年間実務を経験して後、法政大学経営学部教授、コロンビア大学研究員などを経て、2008年より現職。社会人のためのビジネススクールでマーケティングとブランドの教鞭を執る。以下のグローバル企業への戦略アドバイスや社内講師を行っている。GE、マイクロソフト、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、メルセデスベンツ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、資生堂、味の素、日清食品、ソニー、日立製作所、パナソニック、ニコン、日本銀行など。

主著として『ブランド戦略論』(2017)、『消費者行動論』(2015)、『マーケティングキーワードベスト50』(2014)、『ブランド戦略全書』(編著、2014)、『ブランド戦略・ケースブック』(編著、2012)、『マーケティング・リサーチ入門』(共著、2010)、『消費者行動論体系』(2008)、『企業を高めるブランド戦略』(2002)など。日本広告学会賞(3回)、中央大学学術研究奨励賞、日本マーケティング学会ベストペーパー賞、東京広告協会白川忍賞などを受賞。
(編集:株式会社ネクストアド)

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