11月2日、富士通と中国のパソコン大手であるレノボが、PC事業を展開する合弁会社「富士通クライアントコンピューティング」を設立することを発表した。実質的に富士通のPC事業をレノボに売却したこととなるのだが、売却する側と買収する側にはどのような思惑があったのだろうか。
1年以上の時間をかけ売却が決定
PCのコモディティ化とスマートフォン・タブレットの普及による需要低下などによって、日本のPCメーカーは厳しい状況に追い込まれており、撤退や事業売却などが相次いでいる。実際、2011年にはNECが中国のPC大手であるレノボと合弁会社を設立し、PC事業を事実上レノボに売却。また2014年にはソニーが、PC事業をVAIO株式会社に移管し、スピンアウトさせている。
そして新たにPC事業の売却を発表したのが、国内PC大手の富士通だ。富士通はPCとスマートフォンの競争環境激化により採算性が悪化していることから、ITソリューション事業へ、ビジネスの軸足を移す方針を打ち出した。そこで2015年に、スマートフォン関連事業を「富士通コネクテッドテクノロジーズ」、PC事業を「富士通クライアントコンピューティング」(FCCL)と、それぞれ2つの子会社を設立して移管。事業の生き残りを模索することとなった。
その後富士通は2016年、PC事業に関して、レノボと提携する検討を進めることを発表。交渉に関して1年以上の時間を費やしたものの、今年の11月2日にようやく合意に至ったことを発表している。具体的には、レノボがFCCLに対して51%を出資し、経営の主導権を握ることとなった。これによりレノボは、国内で1、2位のシェアを持つNECと富士通のPC事業を傘下に収め、日本市場でトップシェアを獲得したこととなる。
一方でFCCLには、日本政策投資銀行も5%を出資。さらに富士通は44%の出資を続け、引き続き影響力を持っていることとなる。それゆえFCCLでは従来通り、富士通ブランドのPCの開発・生産を継続する形となるようだ。
PCは既に、部材の調達や販売などさまざまな面で、規模がモノを言うビジネスとなってしまっている。それだけに、世界市場で高いシェアを持つレノボへPC事業を売却するというのは理解できるのだが、単に売却するだけであれば交渉に1年以上の時間を費やす必要はなかったはずだ。これだけ交渉に時間がかかったのには、富士通側のこだわりが大きく影響しているといえそうだ。
富士通がこだわった国内生産体制の維持
富士通が一体何にこだわったのかといえば、それは… 続きを読む