昨年10月、台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)の傘下であるシャープが、東芝のパソコン(PC)事業を担っていた東芝クライアントソリューションの買収を発表した。これに伴い同社は、東芝のPCブランド「Dynabook(ダイナブック)」を主導して展開できる特権を得たが、果たしてその狙いはどこにあるのだろうか。
経営危機にあった東芝のPC事業を買収
東芝のパソコン事業は、現在のノート型PCの前身となるラップトップPCを世界で初めて開発したことで知られている。「ダイナブック」の名前は、パーソナルコンピューターの父とも言われる科学者のアラン・ケイが提唱した理想のパソコンの名を冠したもので、長年、国内外のPC市場で高いシェアを獲得してきた。
しかしながら2015年以降、そのPC事業に関する不正会計に端を発して経営上の問題が相次いで発覚したことから、東芝は経営危機に陥った。経営再建のために多くの事業売却を余儀なくされ、特に価格競争の影響から収益性が悪化していたコンシューマー向けのハードウェア事業の大半を失った。
既にテレビ事業を担う東芝映像ソリューションズは中国のハイセンス、白物家電事業を担う東芝ライフスタイルは同じく中国の美的集団の傘下となっているが、PC事業もその例外ではない。2016年に東芝は、PC事業を子会社の東芝クライアントソリューションへと継承し、売却先を探していたのだ。
その買収に名乗りを上げたのは、同じく2016年に経営危機に陥り、再建のため台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)の傘下となったシャープだった。実際シャープは2018年夏頃に買収を明らかにしており、秋頃からは国内外で出展した見本市イベントで同社のブースにダイナブックブランドのPCを展示していた。
そして2018年10月1日には、シャープが東芝クライアントソリューションの株式のうち80.1パーセントを買収し、シャープの傘下企業となることが正式に発表されたのである。2019年1月からは東芝クライアントソリューションの社名がPCのブランドと同じ「Dynabook」となり、東芝の名前が外れ、シャープ主導でPC事業を展開することが明確にされている。
国内外で事業を拡大し黒字化を目指す
経営危機にあった東芝時代のDynabookは、苦戦が続いていた。先にも触れた通り、PC事業は価格競争の激化によって赤字傾向にあり、年々縮小を続け、製品ラインアップも減少していた。だがシャープ傘下となったことで、ホンハイという強力な後ろ盾を得たことから、PC事業の拡大に舵を切るようだ。
最初は国内事業の立て直しに着手し、縮小傾向にある個人向けよりも堅調なニーズがある法人向けを中心として事業拡大を進めていくという。そのためにも主力のノート型PCだけでなく、デスクトップ型PCやサーバーなど、製品ラインナップを強化していくものと考えられる。
次に力を入れていくのが… 続きを読む