超高齢社会のスタンダード(第2回)

シニアの人生を豊かにするのは「介護食」

2017.09.26 Tue連載バックナンバー

 日本は現在、総人口における65歳以上の老年人口が25%を超えた「超高齢化社会」を迎えているが、それはつまり、高齢者向けの市場ができるということを意味する。

 たとえば「食」である。シニアの悩みのひとつに、飲み込んだり、噛んだりする力が弱まっていくことがある。そうなれば、食品を刻んだり、ムース状にするなど、何らかの加工が必要になる。いわゆる「介護食(嚥下・咀嚼困難者用食品)」のニーズが高まるというわけだ。

 富士経済が発表した「高齢者向け食品市場の将来展望」(販売額ベース)によれば、2010年の介護食市場は88億円だったが、10年後の2020年には約3倍の251億円に膨らむと予想している。

 高齢化社会における“成長市場”を狙い、どんな挑戦が繰り広げられているのだろうか。今回は介護食の過去・現在・未来にスポットを当てる。

 

ベビーフードから始まった介護食の歴史

 介護食の歴史は浅い。1980年代に一部の事業所が手作りで介護食をつくったのが始まりで、それが新聞で紹介されたことで、全国に広がっていったと言われている。

 一般消費者向けの介護食は、1998年にキユーピーが発売したレトルト食品が最初だ。翌年には種類を増やして99年からシリーズ化に取り組み、それが現在も『キユーピー やさしい献立』シリーズとして続いている。同社はもともとベビーフードを作っており、それを介護が必要な高齢者に食べさせている家庭が多かった。このような背景があったため、早い時期から、介護食に対する問題意識をもっていたのだろう。

 2000年に介護保険がスタートすると、一般消費者用の介護食に参入する企業が増えていった。現在は、カゴメ、キッコーマン、マルハニチロ、味の素など、多くの食品メーカーは介護食を手掛けている。

 当初は、機能や栄養バランスに気を配ることが最優先だったが、介護食が広がるとともに、「おいしさ」にも目が向けられるようになってきた。

 メニューは毎日食べても飽きないようにどんどん豊富になり、現在ではすき焼き、肉じゃが、酢豚、八宝菜、クリーム煮など、和洋中すべてのメニューが揃っている。

 最近は、見た目にも気を配るメーカーが増えてきた。典型は、食パン、たけこ、サバ、ステーキ肉といった食材をいったんペースト状にしたあと、再び、もとのカタチに成型するといったやり方だ。人間が「おいしい」と感じるためには、視覚が大きく左右している。つまり、「これから食べるものが何か」を形で示すだけで、おいしさが増すというわけだ。

 

乱立する「噛みやすさ」「飲みやすさ」の基準

 多様な企業が参入してくることによって、介護食のレベルはぐんぐんあがっていったが、困った問題も起こってきた。それは、… 続きを読む

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竹内三保子

竹内三保子

1983年西武百貨店入社。紳士服飾部、特別顧客チームを経てフリーライターに。その後、編集プロダクション・カデナクリエイトを設立。共著に『図解&事例で学ぶビジネスモデルの教科書』『課長・部長のための労務管理問題解決の基本』などがある。

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