インターネット上で注文を受けた食品や日用品を自宅に配送する「ネットスーパー」は、共働き世帯や高齢者の間で生活に根付きつつあります。大手スーパーのイトーヨーカ堂(セブン&アイ・ホールディングス)、イオン、西友(米ウォルマート)をはじめ、地方スーパーも参入し始めています。
しかしながら、多くのネットスーパーでは、配送費や人件費の負担が大きく、ギリギリの収益を保っているのが実情です。
小売業の生き残りをかけたネットスーパーが、未来に向けて取り組むべき課題はどこにあるのでしょうか。業界が抱える問題と、それを打開する策について考察します。
既にビジネスは頭打ち? ネットスーパー業界の苦しい事情
日本におけるネットスーパーは、2000年に西友が開始したのが最初でした。当初は実店舗の売り上げの減少を食い止めるために始まりましたが、当時はまだインターネットによる買い物がまだ一般的でなかったこともあり、急激な拡大には至りませんでした。
やがてインターネット環境やスマートフォンが普及すると、共働き世帯や高齢者などの利用者が増加。さらに、米Amazonが日用品の通販事業を始めたことへの対抗として、多くの小売業がネットスーパーを開設したこともあり、市場規模は一気に拡大しました。矢野経済研究所の調査によると、2015 年度の国内食品通販市場規模は3 兆3,768 億円、前年度比は106.3%となっており、ネットスーパーの市場はさらに拡大するという見通しを立てています。
しかし、見通しは必ずしも明るいわけではありません。週刊エコノミスト 2016年2月23日特大号では、「(ネットスーパーは)ビジネスとしては頭打ちの感が出てきた」と指摘されています。同誌ではこの理由として、配送費や人件費の負担増加を挙げられていました。
特に配送費の問題は深刻で、今年はヤマト運輸や佐川急便が料金の値上げを発表しています。収益の確保は、ますます厳しくなることが予想されます。
店舗型、センター型が抱えるそれぞれのコスト
なぜ配送料がネットスーパーのビジネスを大きく左右するかというと、スーパー業界独特の… 続きを読む