旅行予約サイト「エクスペディア(Expedia)」が好調だ。
2017年第2期(4~6月)決算では、グループの売上が前年度比18%増の25億8,600万ドル(約2,824億円)を記録。株価も7月には過去最高の159.5ドル(約1万7千円)となり、2010年当時と比べて7倍以上の値を付けている。
なぜ、ここにきてエクスペディアは急激に業績を伸ばしているのだろうか。そのビジネスモデルを紐解いていく。
ユーザーに「直接売る」販売形態で利益を拡大
エクスペディアは、世界を代表するOTA(Online Travel Agent)のひとつ。OTAとはインターネット上でホテルや航空券、現地のオプショナルツアーの予約が可能なサービスである。
OTAは、「ユーザー(旅行者)が誰と契約するのか」によってマーチャント型とエージェンシー型の2タイプに分類される。その違いは、マーチャント型は「商人」、エージェンシー型は「代理店」という、元の言葉の意味を捉えるとわかりやすい。商人は直接ユーザーと売買契約を結び利益を得るが、代理店はユーザーとサプライヤー(ホテルなど)を結びつけ、手数料を受け取ることで成り立っている。
つまり、マーチャント型の場合、旅行者はOTAと契約することとなり、支払いは事前に行われる。それに対しエージェンシー型では、旅行者がホテルや航空会社などと直接契約することになるので、支払いは現地で行われる。
エクスペディアはこれまで、マーチャント型を中心とするビジネスモデルをとってきた。自社で宿泊施設の部屋を仕入れて、それを直接ユーザーに売る。相場を見ながら自由に価格を設定できるマーチャント型のメリットを生かし、業績を伸ばしてきたのだ。
エージェンシー型移行の裏にライバルの存在が
しかしエクスペディアは、ここ数年エージェンシー型のサービスにも力を入れはじめている。同社は2012年にはホテルの比較サイト「Trivago(トリバゴ)」を、2015年には同業の競合サイト「Orbitz(オービッツ)」を買収。これらはいずれもエージェンシー型となる。
エクスペディアはなぜ、ここまでの利益拡大をもたらした勝因ともいえるマーチャント型に特化する姿勢を貫かず、わざわざ利益率の低いエージェンシー型を取り入れ始めたのだろうか。その背景を探ると、Booking.comというライバルの存在が浮かび上がってくる。
米国発祥のエクスペディアがマイクロソフトの一部としてスタートしたルーツを持つのに対し、Booking.comは… 続きを読む