『半沢直樹』など、多くの作品がテレビドラマ化されている人気作家「池井戸潤」。初回は『ルーズヴェルト・ゲーム』、第2回は『花咲舞が黙ってない!』の原作にもなった『不祥事』、第3回は『下町ロケット』を取り上げた。第4回となる今回は、テレビ朝日系でドラマ化された『民王』の魅力に迫る。
本作は総理大臣の武藤泰山とその息子で大学生の翔の人格が、ある日突然入れ替わってしまい、混乱を避けるため周囲に知らせないまま互いの仕事や生活をおくる物語だ。一見、コメディタッチではあるが、泰山は息子と入れ替わり、大学生として生活する中で、政治家としての日々の中で失われてしまった大切な志に気付いていく。
「あんまり学生を失望させないでください」
漢字の読めない政治家、酔っぱらい大臣、揚げ足取りのマスコミ……数年前に国民の前で実際に繰り広げられた政治の混乱を風刺しながらも、巨大な陰謀に立ち向かう親子の姿が描かれる本作。コメディとしても、いわゆる“入れ替わりミステリー”モノとしても十分楽しめるが、人間ドラマとしての見せ場も多い。特に、一国の総理にまで上り詰めた泰山が大学生として就職活動を行う姿には、気付かされる部分がたくさんある。
何かあるたびに二世議員、世襲政治と揶揄される泰山。そんな父の姿を見てきた翔は、父親の後は継がず、会社員でもやっている方がいいと就職活動を行う。
そんな2人の入れ替わりにより就職活動を行うことになった泰山。はじめは横柄な態度の面接官に対し、腹を立て余計なことまで言ってしまったり、論破してしまったり、と総理のプライドが邪魔をしてうまくいかない。また、翔に向かっても「そんなに就活がしたけりゃ、後で俺がどこかの会社に押し込んでやる」と言い、全くもってやる気を出さなかった。
しかし、無農薬食品を作っている会社の面接に向かう際、翔がその会社に対して抱いていた、純粋な志望動機を知ることになる。… 続きを読む