総務省が2019年6月19日に公表した「モバイル市場の競争促進に向けた制度整備(案)」の内容が大きな波紋を呼んでいる。この案がそのまま通過した場合、いわゆる2年縛りの違約金上限が1000円に引き下げられる他、端末の値引き額も上限が2万円に制限されるなど、従来の携帯電話業界の商慣習を大きく覆す可能性が高い。
果たして、消費者にはどのような影響が出るのだろうか。
スマートフォンの値引き上限が2万円に
総務省は長きにわたって携帯電話の商慣習を見直し市場競争を加速しようとしている。そうした動きの一環として2019年6月19日に公表した「モバイル市場の競争促進に向けた制度整備(案)」が今、携帯電話業界に大きな波紋を呼んでいる。
これは2019年10月に実施される予定の電気通信事業法の改正で適用される制度案だ。今回の法改正によって、通信料金と端末代金を明確に分離する「分離プラン」の導入が義務化されることなどが決まっている。この制度案には、携帯電話会社が具体的にどうすべきかという内容が記されているのだ。
制度案の骨子は大きく2つあり、1つは通信料金と端末代金の明確な分離である。携帯電話大手はこれまで、毎月の通信料金を原資に「実質ゼロ円」などと謳いながら端末の値引き合戦を展開する一方、通信料金の値下げ競争には消極的だった。そこで分離プランを義務化し、通信料金を原資とした端末値引きを一切できなくするのが最大の狙いだ。
とはいえ、分離プランの義務化自体はすでに総務省が実施した有識者会議の議論などでも進められていたもの。NTTドコモが2019年6月に導入した「ギガホ」「ギガライト」で分離プランを採用するなど、携帯電話大手がすでに対応済みなので大きな影響を与えるものではない。
問題になりそうなのは、通信契約に紐づかない端末の値引きに関するもの。生産中止の機種など一部例外を除いて、上限を2万円に制限するというのだ。
これは携帯各社が分離プラン導入に伴い取り入れた端末購入プログラムをターゲットとしている。このプログラムでは、長期間の割賦を組んで端末を購入する代わりに、端末を返却しても一定期間分の割賦残債返済を免除できる。携帯会社にとっては長期間にわたって契約を縛るものとなるため、その提供を難しくするのが狙いだ。
各社のプログラム内容を見るとKDDIの「アップグレードプログラムEX」やソフトバンクの「半額サポート」の場合、残債返済を免除するには、端末の返却に加え機種変更、つまり、通信契約の継続を求めている。ただ、この制度案では通信契約の継続を禁じている。つまり、法改正後は提供できない。そのため、両社ともに2019年9月末をもって終了することを明らかにしている。
だがNTTドコモが2019年5月より開始している「スマホのりかえプログラム」は、通信契約を解約しても残債返済を免除できる仕組みを採用しており、法改正後も適用は可能だ。
しかしながら制度案がそのまま適用された場合、免除される割賦残債と、返却した端末の下取り価格の差分が2万円を超えてはいけないことになる。端末の下取り額が大幅に下がってしまった場合などは、この条件に抵触する可能性が出てくるため、現状の仕組みのままサービスを提供し続けることは難しく、何らかの変更が求められる可能性がある。
解約や乗り換えを促進するため“2年縛り”を無効化
そしてもう1つの骨子となるのが、行き過ぎた「囲い込み」の禁止である。先に触れた端末代金の値引き規制もその一環と言えるが、より本質的な囲い込みの防止につながるとされているのが、2年間など長期間の契約を前提に通信料金を値引く割引サービス、いわゆる「2年縛り」に対する規制だ。… 続きを読む