現在は多くの機種が出回っている、「キッズケータイ」などに代表される子供向けの携帯電話やスマートフォン。だが現在のスタイルに至るまでには、特にモバイルインターネットの利用が広がって以降、親世代と子世代の携帯電話に対する知識と考え方の違い、そして両者の対立が大きく影響している。
既存の携帯電話に“見守り”“防犯”を追加
現在、子供向け携帯電話といえば、ダイヤルのないブザータイプのものや、時計型のもの、そしてスマートフォン型など、年齢や用途に合わせてさまざまなタイプのものが提供されている。だが現在のような子供向け携帯電話のスタイルに至るまでには、実は政治も大きく絡むなど、大きな紆余曲折を経ていることはご存じだろうか。
子供向けの携帯電話という発想が出てきたのは、携帯電話の利用が幅広い年齢層に広まった1999〜2000年前後と見られ、ツーカー(後にKDDIに吸収)が子供が持つことを意識したデザインの、プリペイド方式携帯電話「tel-me」シリーズを投入するなどしている。もっともこの時期はまだiモードのサービスが始まったばかりであり、携帯電話の利用といえば音声通話が主流だったことから、子供向け携帯電話も一般的な携帯電話やPHSをベースにしたものが主で、それほど目立つ存在という訳でもなかった。
その流れが大きく変わり、子供向けを強く意識した端末が急増したのが2006年である。この年には、「イルカーナ」「キッズケータイpapipo!」など、ウィルコム(現在はソフトバンクのワイモバイルブランド)のPHSネットワークを活用して位置情報を確認できる端末がいくつか登場。加えてKDDIが「ジュニアケータイ」A5520SAを、NTTドコモが「キッズケータイ」SA800iを投入するなど、子供向け携帯電話のラインアップ強化を図りだしたのである。
これらの携帯電話はいずれも既存の携帯電話をベースとしながら、GPSによる位置情報の追跡のほか、緊急発呼に連動した防犯用ブザーを搭載。音声通話だけでなく、“みまもり”“防犯”など、子供の安心安全を意識しているのが、大きな特徴となっている。
なぜキャリアが子供向け携帯電話に力を入れるようになったのかといえば、まだiPhoneの登場前であり、既存の携帯電話によるユーザー獲得に限界が見えてきたことが考えられる。より幅広いユーザーの獲得に向け、子供に安心して持たせられる携帯電話を開発し、まだ普及が進んでいなかった子供層の開拓を進める狙いがあった訳だ。
未成年の携帯利用が批判を浴びネット機能が削除
だが2007年末から2008年にかけ、こうしたキャリアの子供向け携帯電話のあり方、ひいては子供の携帯電話利用に対し、大きなバッシングが起きることとなる。その理由はインターネットだ。
2006年頃といえば、ちょうど携帯電話で「モバゲータウン」(現・mobage)や「GREE」に代表されるSNSサービスの人気が高まり、モバイルインターネットの利用に積極的だった学生にSNSの利用が広まった時期でもある。だが一方で、この時期は出会い系サイトに対する規制が厳しくなったことから、未成年との“出会い”を求める人達が携帯電話向けのSNSをターゲットとしたことにより、未成年の出会いに関するトラブルが急増したのだ。
またそれだけでなく、学生に携帯電話が普及したことで、いわゆる「ネットいじめ」の問題が大きく取り上げられたり、子供が携帯メールを1日何十通も交わし続けて生活に支障をきたしたりするなど、現在LINEで起きているようなトラブルも起き始めた。そうした一連の子供と携帯電話、そしてインターネット利用に関する問題が、大きな社会問題として取り沙汰されるようになったのだ。
しかもこの時期は、携帯電話でインターネットを積極利用していた世代が学生を主体とした10〜20代で、親世代はパソコンを使ってインターネットを利用するか、そもそもインターネット利用にあまり積極的ではなかったため、モバイルインターネットの重要性や現状認識に乏しかった。そうしたことから、未成年が携帯電話でインターネットを利用すること自体に問題があるとされ、携帯電話を学生に持たせることが“悪いこと”であるという論調が急速に広まっていったのだ。
その結果として生まれたのが、… 続きを読む