ここ最近、携帯電話キャリアから回線を借りて通信事業を展開する、MVNO(仮想移動体通信事業者)に対する注目が高まっている。最近の傾向を見ると、MVNOに回線を貸す側であるキャリア自身が、MVNOの子会社を設立するという動きも見られるようになってきた。それには、キャリアがMVNOの存在を無視できない状況があるようだ。
KDDIやソフトバンクは、子会社経由でMVNOを展開
大手携帯電話キャリアより安価なサービスを提供していることから、「格安スマホ」「格安SIM(端末の中に挿して使うSIMカードのこと)」などと呼ばれ、価格に敏感な消費者などから広く知られるようになったMVNO。代表的な存在として、日本通信の「b-mobile」やヨドバシカメラ傘下の「ワイヤレスゲート」、楽天の「楽天モバイル」などが挙げられる。
停滞気味の携帯電話市場競争を促進したい総務省の後押しもあって、今、MVNOは拡大を続けており、ネットワーク技術を持つISP(インターネット接続事業者)やベンチャー企業だけにとどまらず、量販店やEC事業者など、さまざまな企業が次々とMVNOへの参入を果たしている。
だが最近、そのMVNOを取り巻く動きにやや変化が見られるようになってきた。というのも、MVNOに回線を貸す側であるはずの大手キャリア自身が、子会社を設立してMVNOになるという、やや不可解な事象が起きているのだ。
実際、auブランドで携帯電話事業を展開するKDDIは、昨年12月に子会社の「KDDIバリューイネイブラー」を立ち上げ、MVNO事業に参入することを表明。現在は「UQ mobile」というブランド名でMVNO事業を展開し、auより安価な料金でデータ通信や通話などができるサービスを提供するほか、MVNOに参入したい企業に向けた支援も進めている。
また今年に入ってからは、ソフトバンクが6月30日に、子会社の「SBパートナーズ」を通じて、さまざまなパートナー企業との協力しながらMVNOを推進していくと発表している。SBパートナーズがどのようなサービスを提供するかはまだ不明だが、MVNOに向けた取り組みを強化することは確かなようだ。
しかしなぜ、そもそも回線を貸す側であるはずのキャリアが、MVNOを展開する必要があるのだろうか。その鍵を解くヒントは、主要3キャリアで唯一、NTTドコモだけが自身でMVNOを展開しようという動きを見せていないことにある。… 続きを読む