先週の京都は、春節(旧正月)の休暇を利用して訪れた中国からの観光客でたいへんな賑わいでした。清水寺など観光地をレンタルの着物姿で歩いたり、祇園のお茶屋さんの前で芸舞妓さんを待ち受けたりと、そこかしこで非日常な世界が現れて、まるでテーマパークのようでした。
さて、前回に続いて、芸舞妓さんの座持ち能力の育成プロセスについて、図を見ながらその流れをまとめてみましょう。
芸舞妓さんの学びのサイクル
舞妓さんたちは最初に学校で基礎技能を習い、習ったことを所属する置屋に持ち帰ります。置屋は舞妓さんを抱えたプロダクションのような事業者ですから、舞妓さんがきちんと育成されないと売上が成り立ちません。そこで、復習をさせたり、足りないところは置屋の負担で個人的にお師匠さんをつけたりという投資をして、基礎技能のチェックをします。

ある程度基礎技能ができてくるとお座敷に出て、お茶屋さんの現場で技能を発揮します。お茶屋さんに行くときは、置屋のお母さんはついて行けませんが、前々回お話したメンターであるお姉さんやお茶屋のお母さんに加えて、お客さんも技能をチェックします。
お座敷では高額なサービス消費がなされるので、顧客の要求水準に達していないときはクレームになる場合があります。「あの舞妓、畳のへりを踏んだ」とか、「歩き方が汚い」「いつまでたっても踊りが上手にならへん」などと、技能チェックのクレームが置屋に戻ってきます。それを基にまた技能を積み重ねるという形で、育成のサイクルが回っていきます。
評価を持ち帰る
特に若い人に、このような言語化できない技能を教えるための最も大切なポイントは、「評価を持ち帰る」ということです。現場でどのような経験をどのような状況で積んだのかということを、帰宅後必ず報告させます。
失敗を責めるのではなく、2度同じ失敗をしないということが一番大事なので、たとえば、お酒をこぼしたということがあったら、注ぎ方が悪かったのか、お客さまのお酒が過ぎていたのか、といった判断を置屋のほうで必ずして、次にどうしたら同じ失敗を繰り返さなくてすむのかということをフィードバックします。

ところが、これが若い人たちにとっては一番困難なところです。失敗したら責められると思ったり、また、失敗を何とか自分でクリアしようと考えたりするものなのです。… 続きを読む