2016年2月4日、12か国の代表がニュージーランドのオークランドに集合し、TPP環太平洋経済連携協定)(の協定文書に署名を行った。今後2年以内の発効を目指しており、実現すれば太平洋上のラインに一大経済圏が誕生することになる。

TPPを強く警戒しているのが中国だ。中国はアジアやオセアニアの国々と
RCEP(アールセップ=東アジア地域包括的経済連携協定)を推進しており、さらに中国から欧州に至るOBOR(一帯一路)を立ち上げてロシアや中東・EU(欧州連合)をも取り込む計画だ。
一方、TPPをリードするアメリカは、TPPを拡大したFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)を提唱しているほか、EUとも
TTIP(環大西洋貿易投資連携協定)を進めている。ただ、FTAAPについては中国がRCEPを拡大する形で構想しており、熾烈な駆け引きが繰り広げられている。
こうした経済圏構想は世界中で進められており、世界の貿易は再編の時代に突入している。今回は世界の経済圏のいまについて考えてみたい。

ふたつの世界大戦とブロック経済
経済圏の争いで思い起こされるのが第二次世界大戦だ。この戦争は大国とその植民地が域内の貿易を優遇する「ブロック経済圏」を作り、それ以外の国々が世界の経済から排除されたことがひとつの原因とされている。現在の貿易体制はこの経験をベースに築かれているので、まずはふたつの大戦前後の歴史を確認してみたい。
20世紀はじめにイギリス・フランス・ロシアを中心とする協商国とドイツ・オーストリアを中心とする同盟国が対立し、1914年に第一次世界大戦が勃発した。この戦いでドイツが天文学的な賠償金を課せられただけでなく、戦勝国であるイギリスやフランスも戦費負担や戦争被害・景気低迷によって大ダメージを受けた。
一方、アメリカは空前の好景気に沸いていた。大戦中、欧州に対する貿易や融資で莫大な利益を上げただけでなく、ドイツの戦後復興を支える大きな力となって世界の経済を牽引した。アメリカは工業生産と金の保有量で世界の約4割を独占し、スペイン→オランダ→イギリスと推移した世界の覇権はアメリカへと移行した。
しかし、1929年10月24日の株価大暴落(ブラック・サーズデー)を皮切りに好景気は突如終わりを告げ、世界恐慌が発生する。主要国は輸入品に高い関税をかけ、多額の通貨を発行して通貨安に誘導し、自国と植民地の産業保護を図った。さらには植民地の資源を… 続きを読む