国民の豊かさを示す指標でもっともよく取り上げられるのが「一人あたりGDP」だ。国内で生産された物やサービスの総額であるGDP(国内総生産)を国民の数で割った値で、日本は1990年代に世界3位を記録し、15年以上にわたって10位以内をキープしてきた。しかし2014年は衝撃の27位! この一人あたりGDPを基準に見る限り、日本はもう豊かな国ではないのである。
資源国である中東を除いてアジア最高位(9位)に輝いたのがシンガポールだ。「熱帯地方で先進国は生まれない」という定説を覆し、赤道から140kmしか離れていない熱帯の地に世界有数の先進都市を築いて見せた。
今回はシンガポールが繁栄を勝ち得た理由を探ってみたい。

※本稿で取り上げる主な数値はIMF(国際通貨基金)と世界銀行の2014年のデータをもとにしている
数字が証明するシンガポールの強さ
シンガポールの国土面積は716平方kmと、対馬と同程度の大きさで、東京23区より15%ほど大きい。人口は547万人だが国籍を持つのは330万人程度で、約4割を外国籍が占めている。
GDP(物価の変動を考慮しない名目GDP)は188か国中36位だが、一人あたりGDPは56,287ドルで9位を誇る(日本は36,222ドルで27位)。より実質的な購買力を表す「一人あたりの購買力平価GDP」では3位に上昇し、国民の平均年収は1,000万円を超えるといわれる。
特にビジネス面で秀でており、世界銀行の2015年ビジネスのしやすさ指数で189か国中堂々の1位。同年のWEF(世界経済フォーラム)国際競争力ランキングでも140か国中2位で、IT活用度では1位に輝いている。金融面では国際金融センター発展指数で4位、教育面ではOECD(経済協力開発機構)教育ランキングで76か国中1位を記録している。
また、地域と地域をつなぐハブ(拠点)としての機能が高く、物流では2013年の港湾取扱貨物量において世界の主要港の中で2位、ワールド・エアポート・アワードではチャンギ国際空港が2015年まで3年連続で世界最高の空港に選ばれている。
新興国シンガポールの50年史
シンガポールの国土は日本よりはるかに小さく、人口も資源も少ないうえに、たった50年の歴史しかない。それなのになぜこの繁栄を勝ち取ることができたのか、… 続きを読む