香港、台湾、新疆、内モンゴル、チベット等々、最近中国の民主化運動や独立運動のニュースをよく耳にする。
いま中国で何が起こっているのだろう?
これらを理解する基礎として、清の時代から現在に至る中国の歴史と思想を解説したい。
中国史上で最大版図を築いた大帝国・清
殷・周・秦・漢・隋・唐・宋・元・明・清……高校世界史でおなじみ、中国の主な王朝名だ。「王朝」は同じ王家が支配する時代のことで、ウマイヤ朝やブルボン朝のような形で示される。イギリスのエリザベス2世はウィンザー朝の女王だが、仮に私が王位を継ぐと長谷川朝が誕生することになる。
中国には上記以外にも多くの王家が存在したが、秦の王・政が最初の皇帝=始皇帝を名乗ってから清の時代まで、皇帝が権力の最高位となる。中国の場合、皇帝位を継ぐ王家が変わると国の名前が変わるため、○○朝という言い方はしない。
そして一般に、国を治める君主を「王」と呼び、王をまとめる者を「皇」あるいは「皇帝」と呼ぶ。そして王の治める国が「王国」で、皇帝の治める国が「帝国」だ。
中国歴代王朝の中で最大版図を築いたのが最後の王朝、清だ。清は明代の土地に加えて、東トルキスタン(現・新疆ウイグル自治区)、チベットと青海(現・チベット自治区、青海省)、内・外モンゴル(現・内モンゴル自治区、モンゴル国)、台湾、ロシア南部の一部を治め、史上空前の大帝国を築く。
さらにベトナムのグエン朝、朝鮮半島の李氏朝鮮、沖縄の琉球王国、ミャンマーのタウングー朝などが清の皇帝に貢ぎ物を捧げる朝貢を行い、君臣関係を結ぶ冊封体制に入った。
列強に切り刻まれた清の国土
ところが18世紀後半に清の支配が衰えると西欧の国々が次々と進出する。大きな転機となったのがアヘン戦争だ。… 続きを読む