子供だけでなく大人も楽しむことができるミュージアムを紹介するこの連載。第2回目では、アジア諸国の文化を見て・触れて・学ぶことができる「九州国立博物館」です。
古くから九州の中心地として栄え、学問の神・菅原道真を祀る太宰府天満宮の存在でも知られる太宰府市。この地に2005年に誕生したのが、東京・京都・奈良に次ぐ4番目の国立博物館・九州国立博物館です。
九州国立博物館へは、太宰府天満宮の境内から「虹のトンネル」を抜けて行きます。天満宮と九州国立博物館を繋ぐこのトンネルの長さは約100m。7色の光が刻々と変化する幻想的な空間を抜けると、スクリーンのように周囲の豊かな緑を映し出す、全面ガラス張りの巨大な建物が現れます。曲線が印象的な屋根は、玄界灘の波をイメージしています。
アジアの名宝を広く展示する博物館
九州国立博物館はアジア圏の美術品を広く蒐集する博物館です。国立博物館なのにどうしてアジアの美術品が多いのでしょうか? その疑問を解く鍵は、この太宰府の歴史に隠されています。
7世紀後半に地方政庁「大宰府」が置かれて以来、九州の中心地として栄えた太宰府。学問の神・菅原道真を祀る太宰府天満宮をはじめ、歴史を感じさせる史跡が数多く残されています。太宰府は中国大陸と地理的に近いことから大陸文化との結びつきが強く、「アジアの玄関口」と呼ばれるほど盛んな外交が続けられました。こうした歴史的背景を鑑みると、アジアの文化財が一堂に会するこの博物館が太宰府の地に建てられたことは必然とさえ言えるのかもしれません。
九州国立博物館では、日本とアジアの交流の歴史を親しみやすく伝えることに力を入れています。その最たるものが、4階にある文化交流展示室。「海の路、アジアの路」をテーマに掲げる常設展です。いわゆる美術館の常設展とは異なり、常に展示替えを行っているのが特徴。年に300回も展示を替えているため、必ずしもお目当ての美術品に出会えるとは限りませんが、いつ来ても新しい美術品を目にすることができます。
文化交流展示室の展示は、時代とテーマによって大きく5つのテーマに分類されています。岡本太郎が驚嘆したという縄文時代の土器・火焔型土器や呪いに使用された土偶などを展示する「縄文人、海へ」から、ヨーロッパとの交流の中で大きく変化した美術品やキリシタンの取締りのため使用された踏絵を展示する「丸くなった地球近づく西洋」まで続きます。加えて、テーマごとに小さな11の展示室が付随し、計4,000平方mという広大な面積を利用した展示室には、一度におよそ800点ほどの文化財が展示されています。
「体験」と「想像力」がキーワード
文化交流室に一歩足を踏み入れると、一般的な博物館に比べて「暗い」と感じるかもしれません。その空間の中に、スポットライトに照らされた展示品が浮かびあがります。… 続きを読む