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コールセンターの要員計画を調整する「トレードオフ」を考える
2019.07.31

AI時代を生き抜く「本物」のコールセンター運営法第8回

コールセンターの要員計画を調整する「トレードオフ」を考える

著者 熊澤 伸宏

 本連載では、これまでに、時系列分析やアーラン式などを用いたコールセンターの業務量やエージェント数(要員数)の算出方法について解説してきました。

 これら世界標準の科学的な手法により導いた業務量や要員数が、論理的には“最も正しい”ことに疑いの余地はありません。

 しかし現実には、そうして導いた数値がそのまま使われることは少なく、さまざまな“調整”を経て、予測業務量や要員計画などが確定、承認されるのが通例です。

 今回は、この“調整”作業である「トレードオフ」の考え方やプロセスについて解説します。

 

トレードオフとはなにか

 コールセンターの周囲には、さまざまなステークホルダー(利害関係者)が存在します。その代表格が、「顧客」「企業」「エージェント」の三者であり、それぞれがコールセンターに対して三者三様の要求をしてきます。

「顧客」は、コールセンターに手厚いサービスと質の高い顧客経験を望みます。「企業」は、利益の最大化を図るために、リソースの効率的な利用によるコストの最小化を要求します。「エージェント」は、コールセンターでの働き甲斐や働きやすさを求めます。

 これらの要求には相反するものもありますが、コールセンターは、それらにバランスよく応えなければなりません。

 そのために、エージェント数を増やしたり減らしたりすることによって、サービス、効率性、働きやすさなど、各ステークホルダーの異なる要求を調整し折り合いをつけるのが「トレードオフ」の作業です。

 以下では、サービス、効率性、コスト、利益、スケールメリットの5つの視点から、表1の例を使ってエージェント数とのトレードオフを検証します。

 表1は、1時間あたり500コール、平均処理時間360秒、サービスレベル目標80%/20秒 等の条件におけるエージェント数と、サービス、効率性、コスト、利益に関する指標との関係を表しています。表の中央の黒地(白抜き数字)の行が、目標のサービスレベル(20秒以内に80%以上応答)を達成するのに必要なエージェント数と、各指標の予測値です。

表1:トレードオフ・シミュレーション

 

サービスとのトレードオフ

「顧客」に対するサービスの観点から明確に言えるのが、「エージェント数を増やせばサービスが向上し、エージェント数を減らせばサービスは低下する」ということです。

 これを、サービスレベル、放棄率、平均応答時間の3つのサービス指標から検証します。

 目標のサービスレベル(80%/20秒)を達成するには57人のベース・エージェントが必要で、その場合のサービスレベルは83.3%、放棄率は2.3%、平均応答時間は13秒となることが見て取れます。

 もし予算に余裕があり、エージェントを1人増やすことができるならば、サービスレベルは83.3%から87.5%に上昇し、放棄率は1%減って1.3%に、平均応答時間は4秒短縮して9秒にそれぞれ向上することが期待できます。

 一方、エージェントを1名減らし56名にすると、サービスレベルは… 続きを読む… 続きを読む

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熊澤 伸宏

熊澤 伸宏

コールセンターの教科書プロジェクト https://cc-kyokasho.jp/ 主宰/ひるぎワークス 代表

アメリカン・エキスプレスをはじめとして約30年にわたり計8社15のコールセンターの立ち上げ・再構築・運営に従事。グラクソ・スミスクラインでは国内屈指の高品質なコールセンターとして高い評価を集め、各種の表彰制度で数々の受賞を果たす。コールセンター運営に関する知識、経験、業績のいずれも他に抜きんでた業界の第一人者。著書に『コールセンター・マネジメントの教科書』https://cc-kyokasho.jp/2636031821.html (リックテレコム、2018年)

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