コールセンターの業務量を予測するためには、その前提として 、コール数(仕事の数量)と平均処理時間(作業負荷)から成る、一定の時間内に処理すべき仕事の量をあらわす「ワークロード」という概念の考え方と、「コール数」そのものが何を指すのかを、正しく理解しておくことが必要です。
そのことについては前回の記事で詳しく説明しましたが、今回は、業務量の予測に不可欠な2つの基礎情報である「ヒストリカルデータ」と「ビジネスドライバー」について、事例を交えて解説します。
ヒストリカルデータとは
ヒストリカルデータとは、コールセンターのワークロードを構成するコール数や平均処理時間の「過去の実績データ」のことです。
販売計画や予算編成など、企業内における多くの予測作業と同じように、コールセンターのワークロードも、まずは過去の実績をベースにした予測を立てます。ただし、過去の実績データを“生のまま”で使うことはできません。そこには、さまざまなイレギュラーな要素が含まれているからです。
したがって、ヒストリカルデータを使うには、それらを取り除き、予測に“使える”データに整えるための検証作業が必要なのです。
ヒストリカルデータの検証は、次の手順で行います。
(1) イレギュラーな値や事象を見つける
(2) イレギュラーな値や事象の原因を特定する
(3) イレギュラーな値や事象を「恒常的事実」と「一時的事実」に分類する
(4) 「一時的事実」による実績値をノーマライズ(平常値に調整)する
コール数のヒストリカルデータを検証する
まずは、コール数のヒストリカルデータの検証事例から見てみましょう。 表1は、あるコールセンターの10~11月のコール数の実績をカレンダー形式で示しています。
表1:コール数のヒストリカルデータを検証する

この実績値からイレギュラーな値や事象を見つけ出し、その原因を特定し整理すると、以下のように分類することができました。
【恒常的事実】
– 毎週明けの月曜日が1週間のピークで日曜日にかけてコール数が減少
– 祝日のコール数は日曜日並み
– 祝日の翌営業日のコール数は月曜日並み
– 12月最終週のコール数は、28日の公務員仕事納め以後、年末にかけて減少
– 12月31日は年末臨時休業
【一時的事実】
– 10月21日にマーケティング部がキャンペーンのDMを発送。翌22日から顧客に届き始め、コールセンターへのレスポンス(問い合わせ)が発生。週明けの24日に通常の月曜日のピークと重なりコール数が激増。以後、1週間にわたってDMのレスポンスが影響しコール数が増加した。
– 11月10日にシステムダウンが発生し3時間にわたりオペレーションが中断。その反動で、翌日のコール数が通常の金曜日より増加した。
この検証で判明した事実のうち、「恒常的な事実」については、毎年同じように発生する事象のため、そのまま翌年以後の予測に反映させます。
その際、気を付けなければならないのが、… 続きを読む