ビジネスの問題を「ゲーム」で考える(後編)

値下げ合戦から抜け出し「一人勝ち」する方法とは

2018.05.28 Mon連載バックナンバー

 人間が意思決定をする際の選択肢を数学的に分析し、理想的な選択をするためにはどうしたらよいか、を解明する学問に「ゲーム理論」があります。これを利用すれば、ビジネスシーンで起きる事象の謎を解き明かし、状況を変えるための対策が打てます。

 前回は「働かない管理職」を変える方法をゲーム理論で考えましたが、今回は会社の中を飛び出し、「市場」の話をしましょう。

 

値下げ合戦で勝ち抜くためのゲーム理論とは

 ビジネスで顧客にモノを売るためには、必ず「値段」がつきまといます。高く売れば、それだけ自社に入ってくる利益は増えますが、あまり高く設定しすぎると、顧客が離れてしまいます。そのため、安く売って多くの顧客を集めることで、利益を出している企業も多いでしょう。

 しかし、ただでさえ安く売っているのに、競合他社がそれよりもさらに低い値段で売ってしまうと、顧客はその会社へ流れてしまいます。それに対抗するために、さらに安い値段で売ってしまうと、そのぶん利益も下がります。牛丼やハンバーガーショップといったファーストフード業界では、まさにこうした低価格競争が度々行われています。

 もちろん企業としては、より多くの利益を出すために、ある程度の価格の高さは維持しておきたいものです。とはいえ、他チェーンが値下げして顧客がそちらへ流出しているとしたら、値下げも検討しなければいけません。

 こうした激しい値下げ合戦で勝ち抜く際にも、ゲーム理論は役に立ちます。それが、「囚人のジレンマ」というゲーム理論の例題です。

 

共犯した2人は必ず自白する

 囚人のジレンマのプレイヤーは、共犯で罪を犯したαとβの2人です。2人は逮捕され、警察でそれぞれが別々に取り締まりを受けています。それぞれが別々の部屋で取締りを受けているので、犯人同士で相談することはできません。

 警察は、犯行の証拠が不十分なため、犯人らに司法取引を提案します。司法取引とは、被疑者に対し証拠収集の協力を求める変わりに、起訴を見送ったり、求刑を軽くしたりすること。アメリカでは一般的な司法制度で、日本でもこの6月からスタートします。

 司法取引の提案内容は、「2人の犯人がどちらも黙秘を続けるなら、どちらも懲役1年にする。どちらかが自白した場合、自白したほうは無罪にして自白しなかったほうは懲役5年にする。だが、両方自白した場合は、どちらも懲役3年にする」というものです。

 この司法取引は、利得表では以下のように表されます。利得の数値は、いずれも懲役年数を表しています。

【利得A】犯人αが黙秘する&犯人βが黙秘する:(-1、-1)
【利得B】犯人αが黙秘する&犯人βが自白する:(-5、0)
【利得C】犯人αが自白する&犯人βが黙秘する:(0、-5)
【利得D】犯人αが自白する&犯人βが自白する:(-3、-3)

 αの立場で考えた場合、… 続きを読む

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景山 悟

景山 悟

経済ライター

起業、経営プロジェクト管理、技術経営などについて執筆活動、講義活動を展開中。

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