「フェイクニュース」の時代を生き抜く(第2回)

「最も醜い選挙」に学ぶ、フェイクニュースの対処法

2018.03.27 Tue連載バックナンバー

 嘘情報や印象操作された情報があふれるようになった昨今の社会。個人や企業などが、「フェイクニュース」の被害にあって評判を下げられるリスクも大きくなってきた。もしフェイクニュースや印象操作の被害にあったら、どう対処すればいいか。1988年のアメリカ大統領選挙からの教訓を紹介する。

 

印象操作は今に始まったことではない

「フェイクニュース」という言葉は、2016年の米大統領選挙で、共和党のドナルド・トランプ候補(現大統領)がしばしば用いたこともあって有名になった。

 しかし、「ここ数年で、世界的に大衆が惑わされやすくなった」などと決めつけるべきではない。すでにアメリカの大統領選挙では、特にテレビが普及して以降、政策や見識よりも視覚的イメージが重視されるようになっている。

 たとえば1960年の大統領選挙では、民主党のケネディ候補と共和党のニクソン候補が争ったが、両者の「テレビ映り」の差が鍵になったと言われている。全国中継されたテレビ討論の場で、念入りにメークをしたケネディ候補の方が若々しく健康的に見えたことで、ケネディに優位を与えたのである。

「イメージ重視」の選挙は、しばしば相手候補の人格を傷つけるネガティブ・キャンペーンにも発展する。その中には、大統領としての資質に無関係な内容や、根拠のない虚偽情報、悪質な印象操作も多く含まれる。その傾向が顕著に現れたのが、1988年の大統領選挙である。

 

有利だったデュカキスに大ダメージを与えた事実無根の噂

 同年の大統領選で争ったのは、共和党のジョージ・H・W・ブッシュ(父ブッシュ)候補と、民主党のマイケル・デュカキス候補である。互いにデマも含めた熾烈なネガティブ・キャンペーンを行ったため、「史上最も醜い選挙戦」とまで言われた。

 デュカキス候補は、マサチューセッツ州の知事として財政再建などの成果を上げ、88年7月の民主党全国大会で民主党統一候補に選出された。対して、ブッシュ候補は現職の副大統領だったが、この時点の世論調査で17ポイントものリードを許していた。

 ところが、11月8日に行われた本選では、ブッシュ候補は約54%の得票率でデュカキス候補に勝利する。この逆転劇では、政策討論よりも相手候補のイメージを傷つける宣伝が大きな枠割を果たしていた。

 選挙戦序盤でリードしていたデュカキス陣営に冷水を浴びせたのは、「デュカキスに精神病の治療歴がある」という噂だった。出所は、リンドン・ラルーシュという、胡散臭い陰謀論を度々唱えている政治活動家が率いるカルト政治団体だった。要するに、常識がある人ならば一笑に付すような、事実無根の中傷である。

 この時、ブッシュ陣営は巧みなやり方で噂の拡散に手を貸している。後に暴露されたところによると、ブッシュ陣営のスタッフがジャーナリストと接触し、… 続きを読む

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三城 俊一

三城 俊一

歴史ライター

学習塾勤務のかたわら、世界史・日本史を問わない執筆活動を行う。著書に『なぜ、地形と地理がわかると現代史がこんなに面白くなるのか』(洋泉社)。

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