リーダー最大の仕事は、事業や組織の方向性を定める大きな決断をすることと言えます。正しい判断のためには、たとえ好ましくなくても真実に基づいた情報が必要です。しかし往々にして、リーダーという立場故に周りが忖度をし、都合の良い情報だけが入って来る状態になりがちです。
この状態を「心地よい繭に包まれた状態」と評するマサチューセッツ工科大学のハル・グレガーセン氏は「リーダーが正しい決断をする為には、自らその繭の外に出る手段を持たなくてはならない」と警告しています。
リーダーが忖度という殻を破り、想定外の真実にたどり着く方法を、グレガーセン氏の論文”Bursting the CEO Bubble”から紹介します。
「未知の未知」がリーダー最大のリスク
リーダーが粘り強く質問すれば、時間は掛かっても必要な情報は大方入手できます。しかし、リーダーが質問すること自体を思いつかなければ、その答えである情報は決して入って来ません。
かつて「Unknown unknowns(未知の未知)」という表現でこの危険性を表現したのが、アメリカのラムズフェルド元国防長官です。彼の言葉を借りると、「既知の既知」(知っていると認識しているもの)、「既知の未知」(知らないと認識しているもの)と比べて、格段に大きなリスクが「未知の未知」になります。知らないということを認識していない、つまり自分が想定すらしていないイノベーションや他社の参入などで不意打ちをくらうことが、リーダーにとって最大のリスクなのです。
これを避けるためには、リーダーが「質問力」を磨く必要があります。ペイパル・テスラなどの創業者イーロン・マスク氏も「多くの場合、答えよりも質問の方が難しい。もし質問を正しく表現することが出来たなら、答えを得ることは簡単だ」と発言しています。
部下に「ダサい」と思われる質問をすべし
グレガーセン氏によると、優れた経営者たちは「未知の未知」にたどり着くための独自の質問パターンを持っているそうです。
例えば米証券会社チャールズ・シュワブのCEOウォルト・ベッティンガー氏は、定期的に… 続きを読む