いまや「イノベーション」という言葉は、企業が未来像を語る際の定番キーワードになりました。日本でも多くの企業の中期経営計画に「イノベーション創出」「オープン・イノベーションの推進」といった言葉が並びます。

 確かにイノベーションが企業の成長にとって重要な役割を果たすことは間違いありません。しかし、ドイツ・ロイトリンゲン大学EBSビジネススクール教授のMartin Mocker氏らは「私たちはイノベーションがもたらす負の側面について、あまり無頓着だ」と警鐘を鳴らしています。

 研究論文「The Problem with Product Proliferation」から、過剰なイノベーションが企業にどのような弊害を引き起こしているのか、またそれを防ぐためにはどうしたらよいのかを読み解いていきます。

 

あの企業もイノベーションで業績が悪化した

 Martin氏は過剰なイノベーションが深刻な業績悪化を招いた例として、オランダの機械メーカー「ロイヤル・フィリップス」と、デンマークの玩具メーカー「レゴ・グループ」の2つの世界的企業を挙げています。

 まずフィリップスは、2000年代初めに大規模な製品ポートフォリオの拡大を行い、電球から医療用スキャナー、ウェブカメラ、車用エンターテインメントシステムのチップセットなど、製品カテゴリーは60以上に増えました。フィリップスは長年プロダクト・イノベーションのリーディングカンパニーであり、2003年の特許出願件数がヨーロッパで1位、アメリカでも10位以内に入るというイノベーション創出ぶりでした。

 しかし、2000年~2010年の間にフィリップスの売上は40%も減少し、時価総額も激減。10年分の利益が吹き飛びました。

 一方のレゴは1997年から2004年にかけてコンピューターゲームや子ども服、テーマパークなどの新分野に進出し、コア事業の玩具ブロックも1万2000までブロックの種類を倍増させ、製品のバラエティを広げていきました。

 しかし、2004年の業績は約310億円の大赤字で、レゴは倒産寸前にまで追い込まれたのです。

 

無秩序なイノベーションで社内オペレーションが複雑化

 なぜフィリップスとレゴの業績が極端に悪化してしまったのか、その理由は… 続きを読む

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前野 智子

前野 智子

フリーライター。大企業・ベンチャー双方での就業経験や海外でのビジネス経験を活かし、ビジネス関連記事やインタビュー記事等の執筆を手掛ける。

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