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マーベルの映画作りに学ぶ、一貫性と革新性の両立
2019.11.30

海外論文に学ぶビジネスのコツ第18回

マーベルの映画作りに学ぶ、一貫性と革新性の両立

著者 前野 智子

 アメリカの映画会社マーベル・スタジオ(MARVEL STUDIOS、以下マーベル社)は、アベンジャーズ、アイアンマン、スパイダーマンなどヒーロー物の映画シリーズを次々にヒットさせています。マーベル社がこの10年で制作した22本の映画は、累計興行収入170億ドルを超え、賞にノミネートされた回数も1本あたり平均64回を数えます。

 映画界においてシリーズ物の続編を成功させることは簡単ではありません。前作の焼き直しであれば観客は退屈し、世界観を変えすぎてもファンが離れてしまいます。その証拠に、映画の評価はシリーズ2作目以降徐々に下がることが多く、アメリカの大手映画批評サイト「ロッテン・トマト」でのシリーズ物の興行収入トップ15の平均評価スコアは68%に留まっています。

 それに対し、マーベル社のシリーズ物の平均評価スコアは84%と、興行収入だけでなく、熱心な映画ファンからも高評価を受けていることが分かります。

 なぜマーベル社はシリーズ物の映画をヒットさせ続けられるのか、インシアード経営大学院のスペンサー・ハリソン准教授は論文“Marvel’s Blockbuster Machine”で、その成功要因を「一貫性」と「革新性」という観点から分析しています。

 

専門性を持つベテランを新しい分野で起用する

 マーベルと言えばヒーロー物、というのは多くの人に認知されているイメージです。しかしマーベル作品の監督の大部分は、アクション映画畑の出身ではありません。たとえば「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のジェームズ・ガン監督はホラー映画、「マイティ・ソー/バトルロイヤル」のタイカ・ワイティティ監督はコメディ映画出身で、マーベル作品の監督15人のうちヒーロー作品の製作経験者は一人だけでした。

 マーベルの映画作りでは監督に大きな裁量を与えます。それぞれの監督が自分の分野で築き上げたノウハウとオリジナリティを、マーベルの映画シリーズに注入することで、単なるヒーロー物に留まらない幅広い世界観・作品群を築くことが可能になっている、とハリソン氏は分析します。

 専門性の高い人材を異なるフィールドで起用して新たな成功を見出すという手法は、映画界だけでなく他の分野でも取り入れられています。例えばヘッジファンドが… 続きを読む… 続きを読む

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前野 智子

前野 智子

フリーライター。大企業・ベンチャー双方での就業経験や海外でのビジネス経験を活かし、ビジネス関連記事やインタビュー記事等の執筆を手掛ける。

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