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サービスの裏側をさらけ出すと顧客満足度が上がる
2019.08.29

海外論文に学ぶビジネスのコツ第15回

サービスの裏側をさらけ出すと顧客満足度が上がる

著者 前野 智子

 企業は顧客体験を向上させるべく、サービスが提供されるまでに裏側で行われる工程を、できる限り短く、目立たなくすることに力を注いできました。しかしオペレーションの効率化が進み過ぎ、顧客の目からその労力が見えなくなると、逆に顧客満足度は下がっていくようです。

 このように主張するのは、ハーバード・ビジネススクールでサービス・マネジメントを研究するライアン・ビュエル准教授です。同氏は論文“Operational Transparency”の中で、今の時代には、あえてサービスの裏側にある作業や労力をさらけ出すことが、顧客満足度の上昇に繋がると提言しています。

 

労力が表に見えないサービスは、価値を過少化される

 ビュエル氏は、労力が表に見えず、顧客満足度が低下している例の1つとして「ATM」を挙げています。

 1967年にバークレイズ銀行が世界で初めてATMを設置したことで、銀行のサービス形態は大きく変わりました。ATMは夜間・休日にも稼働し、窓口係の人間よりも現金を手早く数え、取引を正確に遂行します。ATMの登場で、明らかに私たち顧客の利便性は上がりました。

 しかし顧客がATMを多用し、窓口係と接する機会が少なくなると、銀行への総合的な満足度は下がったといいます。窓口係は顧客の目の前で口座情報を確認し、現金を数え、取引を処理します。この目に見える労力と比べ、ATMが金属の箱の中で行っている複雑な作業は、顧客の目に見えません。

 すると顧客は、窓口係よりもスピードも正確性も優れているはずのATMの価値を過小評価し、ありがたみを感じなくなります。その結果として、利便性が上がっているにもかかわらず、顧客満足度が下がるという構図が出来上がっているといいます。

 1960年代以降、顧客とサービス提供側のプロセスを切り離すことで業務効率が上がり、それが顧客への提供価値を最大化する、という考えのもとでオペレーションが追求されてきました。しかしそれが行き過ぎて、顧客からサービスの裏側が見えなくなったために、生み出されている価値自体が十分に認識されなくなってしまったのです。その結果として、顧客の満足度や購買意欲が徐々に低下するという逆効果が生じることになりました。

 

裏側の労力が見えると、待たされても顧客満足度が上がる

 この現象を逆に考えると、オペレーションが極度に効率化された現在の環境下で顧客満足度を高めるには、サービスの裏側で生じている作業や労力を、あえて顧客に見せることが有効なのではないか、という仮説が浮かびます。

 ビュエル氏がその仮説を裏付ける現象を見出したのは、旅行会社のオンラインでのオペレーションでした。… 続きを読む… 続きを読む

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前野 智子

前野 智子

フリーライター。大企業・ベンチャー双方での就業経験や海外でのビジネス経験を活かし、ビジネス関連記事やインタビュー記事等の執筆を手掛ける。

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