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物理学者が説く。硬直する組織と、革新し続ける組織の違い
2019.07.25

海外論文に学ぶビジネスのコツ第14回

物理学者が説く。硬直する組織と、革新し続ける組織の違い

著者 前野 智子

 ゼネラル・エレクトリック(GE)やノキア、ブラックベリーは、先進的な商品や取り組みで一世を風靡しました。ビジネス書籍などでは、その成功の秘訣が「挑戦に積極的」「常識にとらわれない考え方を推奨する」「ミスに寛容」といった革新的な企業文化にあると紹介されてきました。

 しかし数年後、これらの企業は大きく行き詰まり、他社にリーダーの座を明け渡す結果となっています。

 物理学者であり起業家でもあるサフィ・バコール氏は、革新的であったはずの企業が、急激に変化やイノベーションを拒絶するようになるメカニズムを、科学現象になぞらえて分析しようと試みています。ハーバード・ビジネス・レビュー誌掲載のサフィ氏の論文“The Innovation Equation”より、イノベーティブな組織であり続けるための方程式を読み解きます。

 

イノベーティブな会社も“凝固”する時が来る

 サフィ氏は論文で、「相転移(そうてんい)」という現象を解説しています。相転移とは、水が0℃を境に氷に変わるように、外的条件の変化によって、その物質の性質や状態が非連続に変化することを指します。

 水が氷になる相転移は、分子が自由に動く状態(液体)から動かない状態(固体)に変わることを意味します。つまり「動き回ろうとする力」より「固まって動かないようにする力」が強くなった瞬間に、性質が大きく変化するのです。

 サフィ氏はこの相転移の現象を組織にも見出します。彼は自分の経験と調査から、どれだけ優れた人材・目標を備えたチームであっても、組織の規模がある一点を超えると、革新的なアイディアを受け入れるスタンスから、排除するスタンスへ急激に変化する姿を目の当たりにしてきました。

 組織が変質する転換点は、「成果インパクト」と「出世インパクト」の綱引きによって決まる、とサフィ氏は分析します。

 もし「組織全体が成果を出すことで、自分が得るものも大きくなる」と考えれば、社員は成果を最大化すべく、新しいアイディアや変化も積極的に受容します。一方で「出世して会社内で地位を築くことで得られる報酬に最も価値がある」と考えれば、失敗の危険性が高い急進的なアイディアを避けようとします。

 こうして革新的で変化対応に優れていたはずの組織が、ある瞬間を境に急激にイノベーションを拒絶する組織に変質してしまうのだといいます。

 

どんな会社も硬直から抜け出せる

 しかし組織の規模が一定を超えたとしても、有無を言わさずイノベーションが止まるというわけではありません。通常水は0℃で氷に変わりますが、そこに塩を加えると、凝固点はより低い温度に移ります。

 これと同じように、成果インパクトが出世インパクトよりも大きなものであり続ければ、組織の規模が巨大になったとしても、イノベーションを実現し続けられる、というのがサフィ氏の理論です。

 イノベーションが止まる転換点を後ろ倒しにするには、… 続きを読む… 続きを読む

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前野 智子

前野 智子

フリーライター。大企業・ベンチャー双方での就業経験や海外でのビジネス経験を活かし、ビジネス関連記事やインタビュー記事等の執筆を手掛ける。

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