精神科医の樺沢紫苑氏の著作『絶対にミスをしない人の脳の習慣』(SBクリエイティブ社、2017年)によれば、脳の働きを整えれば、ミスはゼロにできるといいます。前回は、情報を脳に「入力」する際と「出力」する際に起こりうるミスを防止する方法について紹介しました。

 しかし、入力と出力のタイミングでのミス防止策は、言わば水際の対処療法のようなものです。今回は、より根源的な「思考」の段階で脳の働きを調整し、ミスが発生しない仕組みを作るための具体的な習慣を紹介します。

 

「ああ、今の自分はミスしやすい状態だな」と気付けるか

 ミスの発生する原因は、本書によれば「集中力低下」「脳疲労」「ワーキングメモリの低下」「脳の老化」のいずれかとなります。つまり、自分の脳が今この4つのいずれかの状態にあることを自覚できれば、あらかじめミスが発生しやすいことが自覚でき、未然に防げます。

 言い換えれば、ミスを防止するためには、自分自身が今どのような状態にあるのかを察知する「自己洞察力」を持つことが不可欠なのです。

 とはいえ、いざ「自己洞察力を持て」といわれても、どのように鍛えれば良いのか、その方法がわからない人も多いでしょう。樺沢氏は本書にて、自己洞察力向上には「毎日日記を書くこと」を勧めています。

 ここでいう「日記」は、3分程で書ける簡単なもので十分といいます。たとえば、その日起きた「悪かったこと」と「良かったこと」を3つずつ箇条書きで書き出すだけで良いようです。「朝の電車がいつもより混んでいた」「作成した書類にミスがあった」、良いことであれば「ランチで入った店が美味しかった」「いつもより早く帰宅できた」など、些細なことで構わないので、必ず3つ以上書き出すようにします。

 このように文字にして可視化することで、自分の思考や感情、調子の良し悪しなどの漠然としたことが整理され、心身の状態を正確に把握できるようになります。そして長期的に記録することで、自分の調子が下向きになる兆候や、ミスを起こしやすいタイミングも把握できるのです。

 この箇条書き日記術は、自分の状態を意識的に数値化すると、さらに効果的といいます。たとえば「頭が痛いので今日は50点」など、自分の体調を点数で表すと、以前との比較ができ、より客観的に自分の状態と向き合うようになるため、自己洞察力が向上するのです。

 

イチローのルーティーンは「意味がないことに意味がある」

 ミスの原因としては、“ミスをしたらどうしよう”という「不安」も大きな存在となります。

 不安とミスは、切っても切れない関係にあります。というのも、不安を感じると脳が興奮し、脳を疲弊させます。すると注意力や集中力が低下し、ミスが起こるリスクが高まります。つまり、「ミスしたらどうしよう」と考えることが、ミスを引き起こす最大の要因になってしまっているのです。

 この不安を取り除くには、… 続きを読む

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前野 智子

前野 智子

フリーライター。大企業・ベンチャー双方での就業経験や海外でのビジネス経験を活かし、ビジネス関連記事やインタビュー記事等の執筆を手掛ける。

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