顧客の要望を、鵜呑みにしたような提案をしているようでは、一流営業マンにはなれません。顧客は自分自身のことなので視野が狭くなっており、要望の解決策を見落としがちです。もしくは専門的知識がないため解決策の存在すら知らないことがあります。
それを、しっかり見極めて解決策となる提案をできるのが、一流の営業マンです。原因を見極めるには、顧客からのヒアリングにおける質問テクニックがとても重要になります。
売れない営業マンと顧客の会話と、良い営業マンと顧客の会話を比較しながら、顧客の要望を鵜呑みにしてしまうダメな例の失敗点を指摘します。
患者と同じ視野しか持っていない専門家は失格
売れない営業マンというのは、顧客が欲しいと言うものをそのまま売ろうとします。「顧客が欲しいと言うものを売って、なにがダメなのか?」と感じられるかもしれません。ですが、人は自分自身の力ではどうにも解決できないからこそ、知識のある専門家に相談します。その専門家が、ビジネスの現場では「営業マン」になるわけです。
営業マンの会話をよりわかりやすくするために、痛みを訴える患者と医師の初診における会話も交えて説明します。初診で痛みを訴える患者と良くない医者の会話です。
医者「はじめまして。どうされましたか?」
患者「あのー、痛みがあるので止めて欲しいんです」
医者「痛みを止めたいんですね。わかりました。良い痛み止めがあるので、これで良いですか?」
患者の“痛みを止めて欲しい”という要望に従って、医者は痛み止めを処方したわけです。これではヤブ医者だと思われても仕方がありません。
次は優れた医者の診察です。
医者「はじめまして。どうされました?」
患者「あのー、痛み止めが欲しいんです」
医者「痛み止めね。まあ、どこか痛いんですかね。必要ならば薬を出しますので、まずは、どこがどんなふうに痛いのかを、教えていただけますか?」
なぜ優れた医者は、患者の言う要望に従わないのでしょうか?それは、「患者が間違った自己診断・自己判断をしている可能性」を懸念しているからです。言い換えれば、「医者は専門家なのだから、原因を究明して、的確な治療法を見出す」ことが仕事なのです。
これは医者だけでなく営業マンにも、そのまま同じことが当てはまるのです。その例となる会話です。
営業「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか?」
顧客「あのー、電動ドリルが欲しいんです」
営業「電動ドリルですね。色んなタイプがありますが、どのようなのをご要望ですか?」
これでは、最初の医者と同じで、ダメです。薬が欲しいという患者の要望を鵜呑みにしているのと同じだからです。顧客は、電動ドリルというモノが欲しいのではなく、電動ドリルを使って得られる便益(ベネフィット)が、真の要望であることに、気づかなければならないのです。
優れた営業は、このように対応します。… 続きを読む