顧客の主張に対して真っ向から反対し、顧客の立場をなくしてしまうと、商談に支障が出る場合があります。
これに対して、顧客の主張を次々に受け入れ、商談に結びつけるのが「イエス・アンド法」です。言い換えると、顧客が作った“逃げ道”に相手を誘い込み、商談を成立させる心理テクニックです。今回はこのイエス・アンド法を詳しく見ていきます。
気分を害しやすい顧客の心理
商談を成立させるためには、顧客の心理を知る必要があります。
人間は、他人から評価されたいという欲求を持っています。これは「マズローの欲求五段階説」の中の「自我の欲求」にあたります。
「マズローの欲求五段階説」とはアメリカの心理学者、アブラハム・マズロー(1908-1970)が提唱した理論です。欲求を五段階に分け、人はそれぞれ下位の欲求が満たされると、その上の欲求の充足を目指すという欲求段階説です。この説によると、人間の欲求の段階は下位から生理的欲求、安全の欲求、親和の欲求、自我の欲求、自己実現の欲求とされています。
顧客の主張を受け入れれば、自我の欲求が満たされることになり、顧客は満足します。逆に反対すれば、不満の感情を持つことになります。どんなにこちらの主張が正論であっても、不満の感情を持たれてしまえば商談を成立させることは困難になってしまいます。
筆者も従業員意識調査やユーザー会員意識調査を行っており、その際に強く抽出されるのが自我の欲求です。また、モンスターペアレントやモンスタークレーマーなどの出現などに見られるように、現代人は「自我の欲求」を強く持っており、自分の主張が拒否されれば気分を害することになります。
自身の言葉に顧客が縛られる
「自我の欲求」の強い顧客は、こちらからの提案に対して、「金額が高すぎる」や「忙しい」などと断りを入れることがあります。そこで、「イエス・アンド法」では、「そうですね、でも……」ということで説得を開始します。反対に「忙しい」と告げたのに、説得されようものなら、顧客はイライラしてしまいます。
これに対して、顧客の主張を受け入れれば、わだかまりもありません。「イエス・アンド法」の使用例を記載します。… 続きを読む