こんにちは。富士ゼロックス総合教育研究所でお客さま企業のグローバルリーダー育成のご支援などをしています一島直子です。2回にわたり、今求められているグローバル対応力やリーダーの育成についてご紹介します。
前回は若手リーダーを対象とした研修に立ち会う中で、最近感じるコミュニケーションの特徴を中心にご紹介しました。今回はその背景となる考え方などについてご紹介したいと思います。
日本のコミュニケーションのスタイルでは通じない相手にどう伝えるか
日本のコミュニケーションのあり様でよく言われることに、以心伝心、あうんの呼吸がありますが、その特徴は行間で意味を伝え合っているという点にあります。数世代前の日本ほどではないかもしれませんが、上司から「あれ、どうなった?」と言われたら「それはこうなりました」と答えられることが期待されていて、「あれって何のことですか?」と聞こうものなら、小言の一つも飛んできそうです。
このようなコミュニケーションスタイルが成り立つのは、上司がこのタイミングや、この雰囲気で「あれ」と言うからには「それ」のことだなと行間を読み取れるからこそです。
しかし、グローバルなビジネスにおいて、いろんな考え方や価値観を持った人と一緒に成果を出していこうとしたときには、このコミュニケーションスタイルは通用しません。では、どのようにしていかないといけないでしょうか。
たとえば、このようなケースを考えてみます。
その人は今はあなたのプロジェクトのメンバーですが、未来永劫一緒にやっていくというより、今回のプロジェクトの成功までを一つの区切りと考えています。「日本でのプロジェクトの成功に関わったこと」を背景に、もっと分のよい、もっと大きな仕事にどんどん取り組んでいきたいという野心があります。仕事はなるべく短時間で終えることこそが自分の有能さを表すことで、家族との時間も仕事のキャリアアップも重要と思っている。ある意味、機会を「Choice(選び取る)」ことで、人生を発展させていくことが大切な価値観の人です。(※前回の研修の記事を読んでいただいた方は、文中に登場したジャンを思い浮かべていただいてもよいかと思います)
この人は、あうんの呼吸で1を言って10わかる相手ではなさそうです。1を言って10わかる世界は、10を理解するための材料を、1の言葉とそれが発せられた場から相手が読み取っているといえます。逆にいうと、それができない相手には読み取ってほしいことが10なら、10と読み取ってもらえる材料を提供する必要があります。簡単なのは言語化、すなわち、言葉で伝えることです。
では、場に埋もれているあらゆるメッセージのうち、どのようなことを言語化すると理解しやすいコミュニケーションになるのでしょうか。ここでは3つの例をとりあげます。
【1】「相手との関係性」を言語化する… 続きを読む